研究概要 |
社会構造や労働環境の変化によってメンタルヘルスの管理は労働安全衛生上の重要な課題となってきている。しかし日々のストレス度を簡便にモニター可能な無侵襲的手法は提案されていない。呼吸と呼吸性不整脈(RSA)間の位相のシンクロ度が呼吸数の影響を受けずに自律神経活動を無侵襲的に定量化するための情報源となりうることから,本研究ではシンクロ度を用いた無拘束無侵襲ストレス評価システムを開発し,運動を含む日常生活における様々な場面でストレス度を計測することを目的とした。今年度は運動時にストレス指標がどのような変化を示すか解析した。被験者8名をリクルートし,嫌気的代謝閾値(AT)を自転車運動で計測した後,ATの0,20,40,60,80,100%レベルの運動負荷を連続的に課して呼吸リズムと心拍リズムの連続的計測からストレス指標(λ)を求めた。呼吸リズムは分時15回に随意的に固定した。RSAの振幅はAT60%から有意に小さくなったが,λはAT100%レベルにおいてのみ有意に低下した。また,唾液αアミラーゼ活性はAT100%レベルで有意に上昇した。AT60%以上でRSAの振幅が有意に小さくなったことから,この運動強度から副交感神経活動が減弱したと推定される。しかしλはAT60%では低下せずAT100%で有意に低下したこと,また唾液αアミラーゼ活性の上昇は交感神経の賦活を反映することから,λは交感神経活動の変化とより関連することが示唆された。 また,今年度は心電図から呼吸リズム推定するをアルゴリズムを考案し,心電図のみからストレス指標を提示できるソフトウェアを開発した。次年度は計測システムをリアルタイム化し,運動以外の様々な日常生活活動におけるストレス指標の計測を行う予定である。
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