日常生活の一次活動である睡眠時の心拍-呼吸リズム間位相コヒーレンス(λ)と脳波との関連を検討した。睡眠中の脳波と自律神経活動には関連性があることが報告されており,深睡眠時は副交感神経活動が優位になり、REM睡眠は急速眼球運動が見られ交感神経活動が亢進していると言われている。10名の被験者で睡眠時の脳波と心電図を同時計測した。脳波はFp1で導出し,心電図は胸部単極誘導で計測した。被験者は就寝前に電極を装着し約7時間の睡眠後にデータを回収した。心電図の呼吸性振幅変調からフィルタリングにより睡眠時の呼吸リズムを推定した。また,一拍毎の心拍間隔を求めた後,呼吸周波数帯域のバンドパスフィルタにより呼吸性不整脈を抽出した。呼吸リズムと呼吸性不整脈の瞬時位相差からλを算出した。脳波は周波数帯毎にδ波、θ波、α波、β波に分類し,各脳波のパワーを時間-周波数解析により求めた。全ての被験者でλはδ波と強い正の相関を示し、β波とは負の相関を示した。δ波は深睡眠時に、β波は覚醒及びレム睡眠中に出現することから、λを用いて睡眠段階を推定できる可能性が示唆された。これまでの検討から,λをモニタリングすることで無侵襲で自律神経活動の情報を得ることができ,日常生活におけるストレスや睡眠の質などの把握に有用であると考えられた。今年度は並行してλをリアルタイムに計測する携帯用デバイス向けソフトウェアの開発を開始した。Bluetoothを介して心電図を計測し,心電図のみからλを算出するWindows OSベースのソフトウェアは開発を終え,27年度中にAndroid OSまたはiOSへの移植を行って携帯用ストレス評価器のプロトタイプの完成を目指している。
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