研究課題/領域番号 |
24650349
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
横井 浩史 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (90271634)
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研究分担者 |
山田 幸生 電気通信大学, 脳科学ライフサポート研究センター, 特任教授 (10334583)
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キーワード | 生体機能代行 |
研究概要 |
本研究では,電気刺激法を用いた麻痺疾患の運動機能回復訓練のために,筋疲労のリアルタイム計測と,運動と感覚に関係する脳賦活の計測により,忌避反応や疲労を少なくする刺激波形のパラメータを導出する方法論を開発し,長期リハビリテーションへ応用する. 時間的推移を考慮した筋疲労推定法を構築するために,Wavelet変換した筋電位データの高周波帯域のWavelet係数から発揮筋張力を推定し,筋疲労度指標(最大発揮筋張力の低下度合)との関係式に,得られた発揮筋張力推定値を適用することで筋疲労度の推定手法を開発し,検証実験によってその有用性を確認した.また,リハビリに必要な筋収縮力を確保し,筋疲労が少なく,かつ刺激に対する忌避反応の少ないような電気刺激手法を構築するため,刺激パラメータと発現する運動の関係を調査した.刺激パラメータは,刺激頻度を表現するBurst周波数(刺激頻度5,10,20,30,40,50[ms]の逆数)とエネルギー強度を表現するDuty比(30,50,70,90[%])とした.結果として,Duty比が低く刺激頻度が低いパラメータ対とDuty比が高く刺激頻度が高いパラメータ対において,相対的に最大伸展角度が低くなる傾向にあることが明らかとなった.さらに,忌避反応の少ない電気刺激波形が満足すべき条件を明らかにするために,前年度に構築した筋活動及び脳活動を同時に計測可能な実験システムを用いて,刺激パラメータごとの利用者の脳活動との対応関係を調べた.安静時あるいは自発運動中の脳活動と電気刺激中の脳活動を比較した結果,安静時と比較し自発運動のみ,自発運動+刺激に関して運動感覚野に強い賦活が見られた.この結果から,fNIRSでの脳活動計測が,刺激パラメータごと脳活動を評価できる可能性が示せた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究の目的に対して,実施計画では大きく分けて①時間的推移を考慮した筋疲労推定法の構築,②電気刺激パラメータの探索,③fNIRS計測による刺激パラメータごとの脳活動の検討を実施する予定であったが,現時点でそれぞれの課題に対して期待する結果が得られていると自己評価したため,評価区分を「おおむね順調に進展している.」とした.③に関しては,自発運動と自発運動+刺激における脳活動の賦活が見られたが,刺激パラメータの有意性は現時点では認められなかった.今後は被験者数を増やし,刺激の有無における脳活動の有意差について検討し,刺激パラメータと脳活動との対応関係のモデル化を試みる.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では,筋疲労のリアルタイム推定・抑制手法および,筋疲労と忌避反応の少ない刺激パラメータの決定手法を確立し,電気刺激による長期リハビリテーションに応用する. 筋疲労の推定・抑制においては,推定精度向上のため発揮筋張力積分値だけでなく時間に応じた筋疲労回復を考慮するよう,筋疲労度推定手法を拡張し,筋張力積分値は同じでも疲労度の異なる筋収縮タスク(高負荷短時間筋収縮と低負荷長時間筋収縮)に対して疲労度推定を可能にする.また推定された疲労度とその疲労を引き起こした刺激パラメータとの関係性を明らかにし,疲労を出来るだけ抑制する刺激を選択できる手法を構築する.また,前年度では,fNIRSを用いて脳活動及び運動量と刺激パラメータの関係について網羅的に調査し,その傾向を明らかにしたが,平成26年度では,引き続き研究を継続し,回復効果に有効な大脳表皮の特定領野の賦活と電気刺激パラメータの関係性を詳細に調査する.その結果から刺激・脳活動のモデルを生成し,最も脳賦活を高め,運動量を与える刺激パラメータの決定する手法を構築する. 提案する電気刺激パラメータの決定手法が,臨床的効果がどの程度あるかを定量的に評価するため,麻痺患者に対する長期リハビリテーションを北海道大学病院,福井大学医学部と共同のもと検証する.従来の運動療法によるリハビリテーションと併用する形で被験者に適応し,従来の運動療法のみの場合と比較検討し有効性を立証する.長期リハビリテーションの計画には,対象被験者の様態(慢性期,回復期,急性期)に応じ,かつ本手法で推定される疲労度の変化傾向とその要因を分別することにより,個々の被験者に対して最適な運動補助とリハビリテーション時間を検討する.リハビリテーションでの回復効果は随意運動時のパフォーマンス指標やその時の脳賦活部位の様相を測定することにより検証する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では,引き続き大学の既存設備を活用して,方法論の構築と検討を優先し,計画した研究を実施した(次年度使用額として863,000円繰越). 平成26年度の研究費の使用計画は,繰り越した予算を備品(420,000),高性能の筋電センサシステムの試作費(523,000円),謝金(200,000)へ充当する.旅費220,000円とその他300,000円は,当初の計画どおりとする.
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