本研究は,脳卒中片麻痺の運動障害に対する新しいリハビリテーション訓練システムの開発を目的としている.近年,随意運動を反復することにより,脳神経回路を再建したり回復させたりする手法が注目されている.運動学習では,感覚フィードバックや自分自身で筋肉を動かしている感覚をもつことが重要である.研究代表者は,患者が自分の手を動かしている感覚が得られる訓練システムを開発し,それらのシステムと筋電や脳波の計測およびフィードバックを組み合わせた運動機能回復リハビリテーション訓練システムの開発を目指している. 平成25年度は,平成24年度に開発したAR技術を用いた上肢リハビリテーション訓練システムを改良し,小型モニタを被験者の目と手の間に適切に配置することで,本来手が見える位置と同じ場所にCGによるバーチャルハンドを提示できるバーチャルハンドリハビリテーションシステムを構築した.このシステムを用いることで,被験者の手の位置に重ねて表示したCGの手の映像に対し,どの程度身体所有感の転移が起きているのか,実験を行い定量的な評価を行った.また,モーションキャプチャシステムと同期させて書字動作のリハビリテーション訓練を実施するために,手書き文字支援ロボットデバイスを開発した.本システムを用いることで,書字動作の体験や訓練を実施した. 医師や理学療法士等リハビリテーションの専門家との協力体制が確立され,開発したシステムの評価方の検討や有用性の検証を行い,今後の発展システムについても検討した.
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