研究課題/領域番号 |
24650354
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
上見 憲弘 大分大学, 工学部, 准教授 (70280857)
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キーワード | ユーザインタフェース / 医療・福祉 / 音声処理 / 生体計測 |
研究概要 |
声帯機能が使えない人を対象に、人工喉頭音源を用いて、1.発声できる場合はその音声が自然に聞こえるための方法を、2.発声できない場合は残存発声関連機能を装置入力デバイスに利用する方法を検討している。当該年度は、まず、上記1に関連する昨年度検討しきれなかった人工喉頭音源の制御方法について検討した。昨年度は人工喉頭音声のイントネーションを、イントネーション付加モデルを参考として指圧で制御する方法について検討したが、即座にイントネーションをつけることは難しいことが分かっている。本年度は、健常者を用いた会話を想定した実験により、そもそも適切なアクセントを指で即座につけることができるかを、指でつけたアクセントと同時に発声した声のアクセントを比較することで調べた。その結果、指でつけたアクセントの位置と声のアクセントが必ずしも一致せず、訓練後でも5名中1名しか改善しないことがわかり、指圧では即座に適切なアクセントをつけることが難しいことを明らかにした。そこで、より直観的なイントネーション制御方法として、昨年度に引き呼気流による制御方法について検討し、その変換パラメータを明らかにした。次に上記2に関連して、音声ホルマント周波数を装置入力デバイスに利用する方法を検討しているが、当該年度は音源に人工喉頭を用いたときのホルマント周波数の出現範囲を健常者で詳細に調べた。その結果母音に囲まれる範囲ではホルマントを表出できるが、ホルマントを直接マウスポインタの座標に対応させて操作する方法は難しいといえた。ホルマント抽出に人工喉頭音源を使った時のホルマントへの影響を考察し、音源波形としてはホワイトノイズが比較的適していることが分かった。また、障害者のホルマントを調べる方法として人工喉頭を喉に当てて発声することは難しいと考え、口腔から音源を投入して調べる方法について検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は昨年度遅れていた人工喉頭音源の制御方法を中心に行った。以前から行っている指圧によるイントネーション制御について検討を行ったが、指圧による方法自体難しく、会話時に用いるにはさらなる工夫が必要だと考えている。指圧制御の改良だけではなく、訓練も少なくて済むような他の制御方法についても検討して実用的な方法を探っていきたい。また、残存発声関連機能を装置入力デバイスに利用する方法に関しては、人工喉頭音源波形の検討を行い、発声できない人でも本方法が使用できる可能性を示した。しかし当初予定していた、障害者のホルマント特性を明らかにすることについては、その特性の測定方法を健常者で検討するところまでで、障害者で調べるところまで到達していない。次年度は測定方法を早急に確定し、障害の種類によるホルマント特性の違いに注意しながら分類してその特徴を明らかにし、装置入力デバイスだけではなく、音声認識等にも利用できる結果になるようにまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
検討しきれなかった障害者音声の特性の検証を行うと同時に人工喉頭の制御方法についても検討を続ける。修士の院生2名と学部生1名以上で本研究に従事する予定である。 1.人工喉頭音源の制御方法についての検討 実際の会話を想定した場合、指圧による制御が難しいことが分かった。指圧制御の機能は装置に組み込みやすいこともあるので、訓練による上達の可能性や、半自動的なイントネーション付加方法について検討を続けていく。また、訓練が少なく簡単に自然なイントネーションをつける方法について、呼気関連情報や発声時の頭部の動きなどを利用する方法で検討を加える予定である。その結果から発話タイミングやイントネーション指令等の情報を抽出し、その情報を半自動的なイントネーション付加に役立てる方法についても検討していく。 2.人工喉頭音源を用いた時の障害者のホルマント特性の検証と装置入力デバイスの検討 ホルマント情報を装置入力デバイスへ利用する具体的な方法について、どのように適用するのが障害者用入力デバイスとしてふさわしいのか、実際に入力デバイスを作成しながら検討を行なう。また、検討が遅れている障害による口の動かし方の違いで起こる、ホルマントの出現範囲の健常者との違いについて明らかにする。まず、障害者のホルマントを探るための人工喉頭音源の声道への入力装置について早急に開発を行う。その後、本入力デバイスや音声認識に役立つデータになることを見据え、障害者の生成できるホルマントの範囲を調べ、障害により場合分けをしながらまとめていく予定である。被験者の協力が不可欠なため、インフォームド・コンセントやプライバシーについても十分に配慮し研究を行う。
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