研究課題/領域番号 |
24650358
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
橋野 賢 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (00350504)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | センサ情報融合 / 組込みコンピュータ / 光学マウス / 視覚障碍者 |
研究概要 |
歩行時の微細な動き(cm)を計測するため、通常パソコンの入力デバイスとして用いられている光学マウスに光学系を新たに組み込むことによってマウス設置場所の70~80センチ先の地面の相対的動きを計測するシステムを開発した.開発効率を上げるため既存のマウスを利用することにし、幾つかの市販マウスを分解し,内部回路を調査した.光学系の合焦確認を行うためにマウス内のCCD光学信号処理ICと制御ICを切断し,CCD光学信号処理ICの入出力信号を汎用コンピュータで処理できるようにインターフェイスとプログラムを開発した。当初は組込みコンピュータ用として最もポピュラーと思われたPICを用いた.しかし、プログラム開発効率が低いため、最近世界的に注目され始めたArduinoとProcessing開発システムを採用することにした.この採用によってプログラミングが容易になると同時にインターネットを介して世界中で蓄積されたライブラリーを利用することが可能となり、さらに効率が向上した.この開発システムはオープンソースであり、短時間習得が可能でかつ奥が深く今後プロジェクトを継続するためにも理想的なシステムである。 マウス以外にGPSセンサ,地磁気センサなど人間の位置と方向を確認するセンサ類もUSBコネクタを介してコンピュータに接続する.GPSセンサ,地磁気センサについては小型高性能なものが米国で市販されており,今回それらを購入し個別に接続できることを確認した.これら情報を融合し進むべき方向を利用者に提示するには情報処理装置としてパソコンが必要であるが,パソコンはUSBコネクタ以外に外部と情報交換できる端子はないため,利用者への情報提示に問題を有する。最近OSが搭載された超小型組込みコンピュータが海外で開発され日本でも入手できるようになったので、パソコンにおける開発と同時に超小型コンピュータでの開発も進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初修士学生1名の研究協力を予定していたが,配属された学生の能力が当初の見込みと違ったため一人で研究を行うことになった.しかし、3年前に新学部発足と同時に2年生に対する「応用コンピュータ1、2」の授業を任されることになったため、授業準備としての組込みコンピュータの勉強が本研究推進の大きな助力となった。Arduino, Processingというそれぞれコンピュータを得意としないアーティスト向き言語の存在は、新しいハードウェアのソフトウェア立ち上げが容易で,かつそれぞれのよってたつ言語がC++, Javaと奥の深い言語であるため、なれるに従ってより高度なプログラミングを可能とした.ハードウェア、ソフトウェアともにオープン化される世の趨勢のため、従来のC言語に基づく開発は効率が悪く今や時代遅れとなった.当初予定した以上の前準備が必要になったが、採用した方式は開発効率が大変に優れているため当初予定のシステムを年度内に構築することができた.
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今後の研究の推進方策 |
24年度は必要なセンサ類がコンピュータと接続できることを個別に確認し、Arduino, Processingを用いてプログラム開発が可能であることを確認した.これら開発システムは現在まだ開発途上であり、今後さらに充実していくものと思われるので、情報収集と開発システム改良は引き続き継続する.各センサの基本プログラムを開発すると同時に、室内において動作を確認し、野外において実用的に使用できるか動作確認する.光学センサについては昼間のいろいろな明るさ影の影響などについて定量的なデータを取得する.また、赤外レーザを同架することによって夜間でも使用できるアイデアを実施する. 視覚障碍者の位置と向きを特定し、視覚障碍者の歩行を補助するために光学マウス、GPSセンサ、地磁気センサの情報をすべてUSBコネクタを介してノートパソコンに接続し情報融合処理を行う。ノートパソコンは年々小型化しているが、まだ十分でなく更なる小型軽量化が望まれる。そのような観点から次年度も超小型組込みコンピュータシステムによる開発を継続する. GPSセンサは見えている衛星の数や仰角によって誤差が異なるが、通常誤差は20m以上あるため、光学センサとの情報融合においてはパーティクルフィルタリングなどの高度な手法が必要であるが、セキュリティーをさらに上げるために環境に精度を上げる設備を設置する方法についても考察する.ただし環境に設置する方法については制度上の制約が大きいので実用的な手法の提案にとどめる.
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は国内学会に参加しなかったため、また実験備品を精査して購入したため未使用額が生じた. センサシステムや組込みコンピュータは電気的に脆弱で破壊されやすいので、次年度も本プロジェクトで購入する.また、海外から輸入するものは購入に時間がかかるため複数台購入して、研究に空白が開かないようにする.センサとコンピュータを接続するインターフェイスを開発または改良するためのIC、その他周辺用品を購入する. プログラム開発時頻繁に行うプリンタ出力に必要な用紙、トナー、インクなどの消耗品を購入する。 研究途上の成果を発表するため、またこの分野の技術者と情報交換するためアイスランドで開催される福祉関連の国際会議に参加する.
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