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2012 年度 実施状況報告書

ALS患者のための脳波(ERP)を用いた意思伝達支援

研究課題

研究課題/領域番号 24650360
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関島根県立大学

研究代表者

加納 尚之  島根県立大学, 看護学部, 教授 (90177551)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードALS / CA / ERP
研究概要

視覚刺激や聴覚刺激に対して現れる事象関連電位(ERP)の成分であるP200とN200とP300を検出することによって,ALS患者が注意を傾けている刺激を特定することができ,これを意思情報として利用することによって、ALS患者の意思伝達が可能となる。
そこで、平成24年度はALS患者が注意を傾けている刺激を特定することができる実験システムの開発を手がけた。
具体的には、ハードウェアは、PC、生体アンプ、AD変換器、家電製品とその電源を投入するリレーボードから構成する。ソフトウェアとしては、P200,N200,P300を検出するためのプログラムの開発を手がけた。具体的には、脳波に対しフィルタ処理を行う。次に刺激ごとに加算平均処理を行う。そして、平均減算処理を行う。次に台形時間窓関数を用いて、P200,N200,P300が存在する部分の波形を切り出す。最後にスコア方式により、目標とする刺激を特定する。これらの一連の処理により、患者が目標とする刺激を特定し、これを患者の意思情報として利用することによって意思伝達を可能にする。
本システムを用いて、ALS患者に対して目標刺激特定実験を行った。具体的には、「文字」「音声」「文字と音声」「項目」「写真」「イラスト」の6種類の刺激を用いて実験を行い、極めて高い正答率を得ることができた。この研究成果については、平成25年3月に名古屋大学にて開催された「平成25年電気学会全国大会」において、「ALS患者のための脳波(ERP)を利用した目標刺激特定実験」と題して発表を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成24年度はP200とN200とP300を検出し、ALS患者が注意を傾けている刺激を特定することができる実験システムを、ハードウェアとソフトウェアの両面から開発を行った。
実際に目標刺激特定実験を行うに際して、特定した刺激と連動して、それと対応している家電製品の電源を投入する機能を実現する予定であった。しかし、ALSは進行性の難病であり、協力をして頂いている患者の病状が進むことによって、あまり開発に時間をかけていると、実験が困難になってしまう可能性があると判断した。また、この機能がなくても、特定した刺激をディスプレイに提示して、患者にフィードバックすることは可能である。そこで、平成24年度は、家電製品の電源を投入するプログラムの開発は行わなかった。しかし、平成25年度に行う予定であった「文字」「音声」「文字と音声」「項目」「写真」「イラスト」の6種類の刺激を用いて目標刺激特定実験を行った。そして、この研究成果については、平成25年3月に名古屋大学にて開催された「平成25年電気学会全国大会」において、「ALS患者のための脳波(ERP)を利用した目標刺激特定実験」と題して発表を行った。また、患者に対する刺激として、「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」などの項目を用いる目標刺激特定実験を始めている。この実験は、ALS患者の所望の指を動かす「リハビリテーション実験」の先行実験である。

今後の研究の推進方策

ALS患者に対して、「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」などの項目を刺激とする目標刺激特定実験をすでに開始している。この実験は、ALS患者が所望する指を動かす「リハビリテーション実験」の先行実験である。今後はイラストなどによる刺激も行う予定である。この「リハビリテーション実験」は目標刺激特定実験と同様に、事前に患者の個人差を検出しておくことが必要不可欠である。まず、ERPの成分であるP200とN200とP300を検出するために、患者に適したハールウェーブレット関数によるフィルタの中心周波数を見極める。次に、台形時間窓関数の位置と幅を見極める。
本システムは「親指」、「人差指」、「中指」、「薬指」、「小指」の5つの項目やイラストの刺激を、1つずつランダムにALS患者に対して提示する。このとき、患者は動かしたい指を「動け」と念じる。そして、同時に元気だった頃と同様に指を動かそうとする。刺激終了後、本システムは患者の個人差を考慮してその指を特定し、外部の装置によりその指を動かす。たとえ外部の装置により動かしたとしても、自らの意思で指を動かすことで、患者に「喜びと感動」を与えることができる。そして、ALS患者は脳から指などへの信号伝達はできないが、この実験を繰り返すことにより、指から脳への信号伝達経路が開拓され、患者は指を動かすときの感覚を思い出し、リハビリテーションの効果が期待できるのではないかと考えている。

次年度の研究費の使用計画

ALSは進行性の難病であり、患者は世界で約35万人、日本で約7千人いると言われている。徐々に運動神経が壊れていくことによって、しゃべることも手足を動かすこともできず、周囲との意思伝達ができなくなってしまう。しかし、知覚障害などはないことから、自分の衰えゆく有様をつぶさに見ていくことになる。本人や家族の苦痛は計り知れない。そこで、脳波を利用して、「心で念じるだけ」で意思伝達ができ、また、身の周りの家電製品などを制御できるシステムを開発し、早期の実用化を目指している。また、「リハビリテーション実験」を繰り返し行うことにより、指から脳への信号伝達経路が開拓され、患者は指を動かしていたときの感覚を思い出し、リハビリテーションの効果が期待できるのではないかと考えている。本システムの開発に対する患者や家族、そして医療関係者の期待は極めて大きい。
そこで、このような期待に応えるには、複数のシステムを構築して実験を行い、より多くの患者に有効であることを示す必要がある。そこで、本研究においては、研究期間内にシステムを2セット構築する計画を立てている。具体的な計画としては、同時に2セットを構築するのではなく、まず平成24年度に1セットを構築し、有効に稼働することを確認する。次に、2セット目は、このシステムをお手本として、平成25年度に構築する。したがって、次年度使用額は、システム本体であるPCを購入し、2セット目のシステムを構築するために使用する。翌年度分として請求した助成金については、学会誌への論文の投稿、または学会での発表などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013 その他

すべて 学会発表 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] ALS患者のための脳波(ERP)を利用した目標刺激特定実験2013

    • 著者名/発表者名
      加納尚之
    • 学会等名
      平成25年電気学会全国大会
    • 発表場所
      名古屋大学
    • 年月日
      20130322-20130322
  • [備考] 島根県立大学看護学部看護学科 加納尚之 研究発表一覧

    • URL

      http://usri.u-shimane.ac.jp/Profiles/4/0000326/meeting_achieve1.html

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公開日: 2014-07-24  

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