研究課題
本研究の目的は,先天性色覚異常のうち,とくに該当者が多い(日本人男性の約5%が該当する)1型色覚と2型色覚を対象に,これらの色覚で知覚される色差(色同士がどの程度異なって知覚されるかという尺度)と,色差を計算するための方式,色差を定義するための色空間について,明らかにすることである.1型色覚と2型色覚の者は,赤と緑を区別できないことは良く知られているが,実際にはピンク色と水色,黄色と黄緑色,赤と黒,灰色と青緑色など,多くの色組合せにおいて,区別が困難となる事例が明らかになっている.日常生活において,これらの色の違いが分からないために視覚情報取得に困難をきたす者が多いにも関わらず,1型色覚と2型色覚が知覚する色の違い(色差)を尺度化する研究はこれまでなされていなかった.本研究の成果を以下にまとめる:1.現状では色差を求める方式がないため,2色覚のシミュレーション手法で疑似的に1型/2型色覚の色の見えを模擬し,さらに3色覚用の色差式に当該の模擬色を当てはめて,色差を近似的に計算する方法が広く用いられている.しかしこの方法ではシミュレーション手法ごとに色差の近似計算結果が大きく異なってしまうため,正しい色差評価ができないことを明らかにした.2.1型/2型色覚のシミュレーションと,3色覚用の色差式の組み合わせによらず,直接1型色覚や2型色覚の色差を計算する方法を提案した.具体的には,1型2色覚と2型2色覚の均等色空間を構成し,その均等色空間の中におけるユークリッド距離によって,色差を計算する方法を提案した.また1型色覚/2型色覚の視覚実験の結果,1型色覚/2型色覚向けの配色パレットを分析することによって,本研究が提案する方法の妥当性を示した.
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