研究課題/領域番号 |
24650365
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
上林 清孝 同志社大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (70415363)
|
研究分担者 |
松下 明 筑波大学, サイバニクス研究コア, 助教 (80532481)
|
キーワード | 脊髄反射 / H反射 / 運動制御 |
研究概要 |
ヒトの身体運動は上位中枢からの下行性指令と反射応答の相互作用によって調節されており、反射自体も促通性と抑制性の両入力によりその興奮性が修飾されている。この反射興奮性の変化に関して、感覚神経への経皮的な電気刺激によってHoffmann反射(H反射)として誘発される単シナプス性の脊髄反射を中心に研究されているが、上位中枢との掛かり合いについてはいまだ不明な点が多い。ラットやサルなどの動物実験では報酬訓練による学習で反射を随意的に促通・抑制させることが可能との報告があることから、本研究ではヒト被験者に対してヒラメ筋のH反射を促通もしくは抑制させるよう条件を提示し、その際の反射変化度合いと脳活動の関連性を調べることを目的としている。 本年度は成人健常者を対象に、座位姿勢にてヒラメ筋H反射や前脛骨筋H反射で随意的な反射調節の程度を調べ、ヒラメ筋に比べて上位中枢からの入力を受けやすいとされる前脛骨筋で経時的な反射変化を確認した。実験中に被験者が実験参加のモチベーションを高く維持するよう、課題の成功数に応じた報酬を与えることとした。また、非侵襲的に脳の興奮性を変えることができる経頭蓋直流刺激(tDCS)が年度末に所属学部に導入されたため、この装置を用いた実験を開始した。健常被験者に対して30分間のtDCSを運動野に与え、電極の極性を変えることによって運動野の興奮性を前もって促通もしくは抑制させ、脊髄反射の随意的な調節に影響が生じるのか現在実験を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はMRI環境下での実験を予定していたが、4月に所属先を異動したことでMRIでの実験を実施することができなかった。しかしながら、随意的な反射制御での上位中枢の関連性について、皮質脊髄路のコネクションが強いとされる前脛骨筋を対象にした実験課題にて研究を進めた。さらに、tDCSを用いることで、外部刺激で運動野の興奮性を変えた条件で実験を開始することができ、研究はおおむね順調に進展しているものと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度は、tDCSを用いた研究を更に進める予定である。運動野や感覚野への刺激による随意的な反射調節への効果を明らかにし、皮質興奮性と反射調節の関連性を探る。実際に運動野の興奮性がtDCSの刺激で変化していたかを確認するため、経頭蓋磁気刺激(TMS)で誘発される運動誘発電位の大きさを調べることとする。現職では隣接する他学部にMRI装置があることから、その施設を利用したfMRI実験の実施についても検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
3月の時点で英文校閲のための予算を残していたが、次年度支出へと変更したことで5万円程度の次年度使用額が生じた。 すでに電気刺激装置やデータ記録機器は揃っており、高額機器の購入予定はない。最終年度であることから実験回数の増加が予想され、被験者と実験補助者の謝金を多く支出する計画である。また、学会での成果発表に加え、研究分担者の機関での実験や打ち合わせのため、旅費を使用する予定としている。
|