研究課題/領域番号 |
24650366
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 義春 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60251427)
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研究分担者 |
東郷 史治 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90455486)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 睡眠段階 / 遷移現象 / 睡眠の質 |
研究概要 |
睡眠圧の変化が睡眠段階遷移に及ぼす影響について検討することを目的として、夜間睡眠時の睡眠段階遷移データを収集し、遷移解析を開始した。 睡眠実験は、健常成人16名を対象とし、日中を通常に過ごした後の夜間(コントロール条件)と、身体運動により睡眠圧を増加させた後の夜間(運動条件)に実施した。運動条件では、被検者は日中に自転車エルゴメータ駆動を行った。自転車駆動時には負荷を20Wから20秒ごとに5Wずつ漸増させ、被検者は疲労困憊に達するまで運動を実施した。睡眠実験では、就寝時刻と起床時刻を各被検者の通常の就寝・起床時刻に設定し、睡眠ポリグラフ記録を行った。記録終了後、国際基準に従い睡眠段階(覚醒、Stage1、Stage2、徐波睡眠[slow wave sleep; SWS]、レム[rapid eye movement; REM]睡眠)を30秒ごとに判定した。その上で、各条件(コントロール条件、運動条件)について各睡眠段階間の遷移確率を計算した。 その結果、運動条件ではコントロール条件と比較して、Stage1からStage2への遷移確率が有意に(p<0.05)増加し、一方、Sage1から覚醒への遷移確率は減少する傾向(p<0.06)にあった。 以上の結果から、睡眠圧の増加によって覚醒、Stage1、Stage2の間の遷移動態が変わることが示唆された。このことは、Stage2より浅い睡眠に関わるflip-flop型システム(Stage2-覚醒/Stage1)の動態の変化を反映している可能性があり、したがって、Stage2の動的制御と関連する複数の結合振動子で睡眠全体の動的構造をモデル化する上での基盤となる点で、意義があるものと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の計画は、健常成人20名(20-60歳)を対象としてデータの収集(睡眠実験)を行うことであった。条件は、日中を通常に過ごした後に睡眠実験を行うコントロール条件、昼寝により睡眠圧を減少させた後に睡眠実験を行うNap条件、前夜からの断眠により睡眠圧を増加させた後に睡眠実験を行う断眠条件の3つを計画していた。 現在までに、まず計画を再検討し、断眠により睡眠圧を増加させるのではなく、身体運動実施により睡眠圧を増加させることとし、断眠条件に代わり運動条件を設定した。その後16名を対象に、コントロール条件と運動条件についてデータを収集した。また、平成25年度に計画していた解析の一部を開始した。
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今後の研究の推進方策 |
健常成人10名(20-60歳)程度を新たに対象者に加え、引き続きデータの収集を行う。その後、データの解析・数理モデルの構築を行い、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。解析では、睡眠ポリグラフデータから30秒ごとに睡眠段階を判定するとともに、Stage2から各睡眠段階に遷移する直前のStage2における脳波の特徴を各条件で調べる。さらに各睡眠段階間の遷移確率を計算し、徐波睡眠圧の変化(昼寝/身体運動)が想定される各振動子へ与える影響を定量的に明らかにする。モデルは、Stage2より浅い睡眠に関わるflip-flop型システム(Stage2-Wake/Stage1)、Stage2より深い睡眠に関わるシステム(Stage2-SWS)、REM睡眠に関わるLotka-Volterra(リミットサイクル)型システム(Stage2-REM)の3つの振動子を結合させたものとする。Stage2-SWSの振動子については、睡眠実験データからflip-flop型かリミットサイクル型かを決定し、さらに各振動方程式の結合様式を決定する。また、覚醒方向・SWS方向・REM睡眠方向への圧力を表す項も各方程式に入れ込み、全体のシステムにノイズを加えた形でシミュレートし、各条件、さらには服薬時(データは取得済み)の睡眠構造を再現できるか確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
資料整理(睡眠ポリグラフ解析の補助)の謝金に約120万円、論文投稿・掲載料に約40万円、国際会議出席に約60万円、解析システム(ハードウェア、ソフトウェア)の購入に約50万円の支出を予定している。
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