研究課題/領域番号 |
24650373
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
梅澤 章男 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (70151925)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 情動 / 発達 / 母子相互作用 |
研究概要 |
平成24年度は,方法論に関する検討,特に実験方法の検討を目的として,以下(1)~(4)の作業を行った。 (1)自然な情動変化を引き起こすための映像バッテリーを,放送番組と市販されている映画,アニメーションソフトから作成した。基本情動を引き起こすシーン(以下映像クリップと記す)は,ポジティブな情動(喜び,優しさ,笑い,リラックス)誘発するPOSIクリップとネガティブな情動(怒り,不安,恐怖,悲しみ)を誘発するNEGAクリップを複数抽出し(各クリップの長さは約2~3分),それをPOSI-NEGA-POSIの形に組み合わせた実験映像を作成した。 (2)(1)のクリップ視聴時の子どもと保護者の生体情報を同時測定するためのシステムを開発した。研究代表者の友人に依頼して,同時計測のトライアルを行い,被測定者への負担が最小になり,なおかつ複数の生体情報を測定することができるシステムを目指している。システムの一部については,本年度研究代表者が主催する第31回日本生理心理学会のワークショップにおいて発表する。 (3)得られた生体情報から他覚的に情動変化を推定する課題について,これまでのデータを分析し,呼吸活動が情動生起の指標として有効なこと,呼気ガスがNEGAとPOSIの識別指標として有効なことを確認した。得られた成果については,第31回日本生理心理学会で発表する。 (4)情動の発達に関して思春期から成人期までの縦断的な変化を測定するための心理尺度の開発を実施した。とくに情動発達と健康の関係を探索するために,児童・生徒用の心理尺度を開発した。研究成果は,第54回日本心身医学会(横浜)および第41回日本バイオフィードバック学会(鎌倉)で発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い順調に進展しており,得られた研究成果については順次学会発表を行い,投稿論文の準備を進めていく。また,本研究に関連した研究を行っている海外の研究者と討議を行い,関連した資料を収集するための海外出張を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成25年度以降は,母子相互作用過程の研究方法のプロトタイプを開発することを主たる課題として予備実験を重ねる予定である。情動の生起を反映する考えられる分時換気量(1分間当たりの換気の総和:推定値)と,快―不快情動を反映すると考えられる血流量と拍動間隔データに対して,時系列及び周波数解析を施し, POSI映像,NEGA映像視聴時における特徴的な生理変化を抽出する。 (2)(1)で得られた母子の生体情報の時系列変化データに対して相互相関分析を施すことにより,母子の生理変化の同期性と乖離を評価する。同期が崩れるポイントについて,母親と幼児のどちらの変化が先行しているかを同定する。視聴時の表情を含む母子の行動変化をハイビジョン映像に記録するとともに,母親に対して自身と子どもの情動喚起についての主観的な評価を求める。母親の主観的な評価と幼児の生体情報の変化とが一致しているかどうかを評価する。 (3)情動発達は特に健康との係わりで重要である。平成24年度に作成に着手した児童・生徒用アレキシサイミア尺度,健康調査票,身体変化知覚尺度(いずれも英語版)については,日本語訳及びそれを元にした英文への戻し翻訳を行う。完成した尺度は,(1)の実験計画において保護者に記入を依頼するとともに,児童・生徒の情動発達と健康に関する調査研究で用いる。 (4)作成した実験調査計画を福井大学教育地域科学部倫理審査委員会に申請し,倫理審査を受ける。承認を受けた計画に基いた実験及び調査を実施し,データを収集し,成果を取りまとめていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費使用計画は,予備実験とデータ解析のための消耗品,成果発表のための国内旅費,実験協力者謝金,心理尺度作成と投稿論文用の翻訳経費が中心になる。この他,平成24年度の研究費の残額と平成25年度研究費を合わせて,成果報告と資料収集のための外国出張経費に充てる。
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