研究課題/領域番号 |
24650373
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
梅澤 章男 福井大学, 教育地域科学部, 教授 (70151925)
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キーワード | 情動 / 発達 / 母子相互作用 |
研究概要 |
平成25年度は,前年度に行った方法論の検討を踏まえて,児童を対象とした実験に取り組むとともに,以下(1)~(4)の成果を得た. (1) 第31回日本生理心理学会のワークショップ”呼吸計測から見えてくるもの”において,本研究で開発した測定システムを用いて,感情に伴う呼吸変容を報告した.また,公立小学校の協力を得て,同システムを用いて,小学校3年生の児童32名を対象とした呼吸・心臓血管系計測を実施した.子どもたちの不安レベルの低下とそれに伴う生理測度の変化を確認した.研究成果については,今秋広島で開催される第17回国際心理生理学会議(IOP2014)で発表を予定している. (2) 情動発達は特に健康との係わりで重要である.平成24年度に作成に着手した児童・生徒用アレキシサイミア尺度,健康調査票(いずれも英語版)の日本語訳と英文への戻し翻訳を行い,尺度の開発者との意見交換を経て,日本語版尺度を完成した.完成した尺度を用いて収集した児童・生徒データの分析結果の一部を第54回日本心身医学会(横浜)で報告し,生徒用アレキシサイミア尺度については.日本感情心理学会機関紙”感情心理学研究”に投稿し,審査の結果,受理された. (3) 得られた生体情報から他覚的に情動変化を推定する課題について,これまでのデータを分析し,呼吸活動が情動の指標として有効なこと,呼気ガス快,不快Iの判別に有効なこと,呼吸自己制御の心理生理的効果については,第31回,32回日本生理心理学会で発表した. (4) 感情変化に伴う身体知覚への乏しさが,健康を阻害するリスクファクターになるという仮説がある.本仮説を検証するために作成した身体変化知覚尺度について,感情誘発時の成人データを収集した.研究成果については,日本バイオフィードバック学会の機関紙”バイオフィードバック研究”に投稿し,本年度総会でも報告を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に従い順調に進展しており,得られた研究成果については順次学会発表を行い,投稿論文の準備を進めていく.
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今後の研究の推進方策 |
(1)平成26年度は,母子相互作用過程の評価プロトタイプを開発することを主たる課題とした実験を今夏に予定している.情動の生起を反映する考えられる分時換気量(1分間当たりの換気の総和:推定値)と,快―不快情動を反映すると考えられる血流量と拍動間隔データに対して,時系列及び周波数解析を施し, POSI映像,NEGA映像視聴時における特徴的な生理変化を抽出する.なお,実験協力者は,あらかじめ実験の内容(特に映像の内容と呈示スケジュール)について説明し,了解が得られた母子を対象とする. (2)(1)で得られた母子の生体情報の時系列変化データに対して相互相関分析を施すことにより,母子の生理変化の同期性と乖離を評価する.同期が崩れるポイントについて,母親と幼児のどちらの変化が先行しているかを同定する.視聴時の表情を含む母子の行動 変化をハイビジョン映像に記録するとともに,母親に対して自身と子どもの情動喚起についての主観的な評価を求める.母親の主観的な評価と幼児の生体情報の変化とが一致しているかどうかを評価する. (3)倫理上の問題は,情動発達研究においてクリアーすべき重要な課題である.本研究の最終課題は,倫理面を考慮した情動発達研究のプロトタイプを開発することにある.(1)と(2)の検討を経て,子どもの情動発達,特にネガティブな情動とポジティブな情動の発達を分析するための評価実験について,標準プロトコールを作成し,福井大学教育地域科学部倫理審査委員会の倫理審査本年9月に受ける予定である.倫理面での第3者評価を経て,最終的な評価プロトコールを確定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額を用いて,平成26年3月28日から4月4日にアメリカ合衆国のラトガース大学に海外出張した. 当初の計画通りに使用.
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