器械運動の指導法に関する研究の多くは主観的な運動観察に基づく運動学的方法が一般的であるが、運動力学や解剖・生理学を基盤として動きのメカニズムに接近するスポーツバイオメカニクスの手法を用いた指導法のアプローチは少ない。また、一般に器械運動や体操競技を研究対象とした研究では、学習の課題となる個々の技についてその構造やメカニズムを検討することが多いが、学習者を支援する科学的取組みは少ない。指導現場では分析によって得られた客観的データを指導の場面に直接フィードバックさせ、その学習過程を呈示するようなシステムが望まれており、本研究はその実現を目指すものである。 初年度は計測機器の導入を行い、実験環境を整備するとともに計測精度や導入方法を検討するための予備実験としてマット運動の伸膝前転を取り上げ、3次元映像解析システムを基幹に床反力測定、無線式筋電図計によるEMG測定を同時に行い熟練者と未熟練者の特徴を明らかにした。この結果は日本体育学会第64回大会(立命館大)にて発表し、その内容を発展させて東海大学紀要に論文として纏めた。25年度は鉄棒運動の前方支持回転を題材に熟練者と未熟練者の特徴を明らかにした。この結果は26年の日本体育学会第65回大会(岩手大)にて発表し、現在、その内容を発展させた論文を執筆中である。26年度は跳び箱運動の「開脚とび」を題材に研究を進め、これまで蓄積してきたデータや知見をカメラ付きタブレット型PCに組込んで教員養成系の器械運動の実技授業で活用する段階として計画したが、タブレット型PCに搭載するソフトウェアの設計と構築に関わる技術的側面に未解決な問題が多く、目的とした映像データとともに学習者に呈示するためのデータベースの完成には至らなかった。しかし、この研究は継続し教育現場で採取したデータを即座にフィードバックする学習方法の開発に努めて行きたい。
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