本研究の目的は、キャンプ(野外)活動が、知的・発達障がいのある人の「生活の質」「自立」「発達」にいかに貢献できるのかを実証的に検証し、安心して生活できる環境とネットワークづくりを提言することにある。 2014年度は「実践研究」と「実態調査」を総合的に分析し、知的・発達障がいのある人のキャンプの意義と可能性について実証的に検証した。 「実践研究」では、年3回(1泊2日)の軽度発達障がいのある小学生対象キャンプ参加者の「ご家族から見た参加者の変化」「参加者本人の感想」についてアンケート調査を行った。「変化」についてのアンケートには「友達ができた」「自分でなんでも挑戦したがる」「お手伝いをしたがる」「親離れできた」「学校の宿泊学習が無理なくできた」などの意見をいただいた。参加者の感想も「次回したいこと」「他者との関わり」が具体的に記されていた。このことから、学校や家族以外の他者とのキャンプが、参加者の自主性の向上につながっていることが示唆された。 また、40年間自閉症児対象キャンプを年間を通し行っている団体のキャンプ報告書とスタッフトレーニングマニュアルによる実践資料を整理した。その結果、キャンプは①レクリエーション ②療育・教育、③ご家族のレスパイト ④学生と専門家のトレーニング ⑤障がいのある人の雇用・就職訓練の機会の提供をするため行われていることが事例研究から検証された。このことから、知的・発達障がいのある人のキャンプ活動が結果として「生活の質」「自立」「発達」を促進することがわかった。 「実態調査」大阪市とその周辺の障がいのある人のキャンプ実態調査では、205団体中70団体が、障がいのある人のキャンプを行っている。さらにキャンプを実施(継続)するには障がいのある人の野外活動支援スタッフの育成と運営に関する支援と研究が必要であることがわかった。
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