飲酒は脂肪肝や肝硬変を引き起こす要因である.これは,アルコールが分解される際に肝臓に負荷がかかるためである.しかし,アルコールは肝臓だけでなく筋においても酸素を使って分解される.故に,筋肥大によって飲酒による肝臓の負荷軽減つながる可能性がある.本研究では,健康なヒトに筋肥大のトレーニングを行うことで全身におけるアルコール分解能の変化が生じることを検証する. 本研究では20歳以上の健康な被験者9名を対象として,12週間の筋肥大トレーニング前後でそのトレーニング効果とアルコール分解能を測定した.筋力測定は被験者ごとにスクワット,マシンによるベンチプレス,マシンフライの3種目を漸増で測定する直接法で行った.アルコール分解速度測定については日を改め,早朝絶食状態においてアルコール濃度20%の焼酎を300ml飲用し,その後30分ごとの呼気中アルコール濃度を経時的に測定した. トレーニングは筋肥大に有効とされるレジスタンス・トレーニングである低速での拳上を行うスロートレーニングとした.種目はスクワットとマシンによるベンチプレス,マシンフライとした.被験者らは毎セット拳上できなくなるまで行い,1回のトレーニングで3セット行った.このトレーニングを週3回以上,12週間にわたり実施した. 結果として,トレーニング前後でスクワット,マシンによるベンチプレス,マシンフライ全ての種目において最大拳上重量は増加した.また,呼気中のアルコール濃度はトレーニング前に比してトレーニング後で定値を示す傾向が見られた.したがって,トレーニングによる筋機能の向上は全身のアルコール分解能力を向上させると考えられる.
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