研究概要 |
本年度は、1) 鍵盤楽器演奏において重要となる複数指の複雑な協調(コーディネーション)を必要とする運動、および2) ストリートダンスの基本技能であるリズミカルな聴覚信号に対する全身動作の同期運動を対象として、運動の速度、運動の複雑さ、 聴覚信号の情報源(外部からの聴覚情報/自己発声による聴覚情報)などの変数を操作し、これらの運動スキル遂行に対する影響を検討した。複雑な指運動を対象とした実験においては、参加者は速度を徐々に増大させつつ以下の課題を遂行した。1)単純な単指タッピング(1,2,3,4の各指)、2) 2指を用いた交互タッピング(23および34)、3) 3指を用いた交互タッピング[2(34), (23)4, 3(45), (34)5,4(35),3(24)、括弧内の指は同時に動かす。以下同様]、4)4指を用いた交互タッピング[2(345), (234)5,(23)(45), (24)(35)]、5)4指を用いた系列タッピング(2345, 5432)。その結果、3指および4指を用いた交互タッピングにおいて、速度の増大に伴い指のグルーピングパターンが変化する新たな相転移現象および系列順序に依存して安定性が変化する系列効果を見出した。また、ストリートダンスの基本技能遂行に関して、開眼および閉眼にて感覚運動同期課題を行い、閉眼に伴う姿勢動揺の増大が感覚運動同期に与える影響について実験を実施し、現在データを解析中である。さらに、内部からの情報を利用して身体運動の自己組織化を促すことができる可能性があることから、自己発声を用いて感覚運動同期パフォーマンスを安定させる方法について検討している。
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