研究課題/領域番号 |
24650384
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
吉田 和人 静岡大学, 教育学部, 教授 (80191576)
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キーワード | 卓球 / サービス / 威力 / ボールの回転数 / 選手の動き / ラリー中の打球回数 |
研究概要 |
卓球のラリーでは,相手打球の回転の影響を強く受ける.そこで本研究は,ボールの回転が特に重要とされている卓球サービスに関して,世界トップレベルから日本の地方レベルまでの大会における試合を対象に,ボールの回転と打球フォームの分析を行ない,それらの結果と対戦選手のレシーブの成否などとの関係から,球威を決定する要素を明らかにしようというものである.この研究により,「ボールの回転により球威を増す」ことが必要とされる場面の多い卓球について,ボールの回転からみた競技特性の解明が進むこと,新たな技術の創造のための有効な知見が得られること,などが期待できる. 3年計画の2年目にあたる平成25年度は,平成24年度と同様に,以下の撮影と分析を行なった. 1)撮影 世界トップレベル,日本トップレベル,および日本地方レベルの各大会において撮影を実施した.1試合の撮影には,高速度ビデオカメラ(1000fps)1台と家庭用ビデオカメラ(30fps)1台を用いた.高速度ビデオカメラの撮影対象は,男女それぞれの各大会の上位選手が,カメラに向かってプレーしている時のサービスとした.高速度ビデオカメラでは,ボールに刻印されている製造会社のマークの動きと,選手の動きが分析できる映像が得られるようにした.家庭用ビデオカメラでは,試合全体が観察できる映像が得られるようにした. 2)分析 平成25年度撮影の映像について,ボールに刻印されているマークの動きから,ボールの回転数を測定した. その他,本研究において実戦場面から得られるデータ数には限りがあるため,それらを相対的に評価する目的で,関連研究のデータから次の分析を行なった.(1)国際大会におけるサービスの回転数.(2)実験場面におけるサービスの回転数と動作.(3)多数の試合におけるラリー中の打球回数からみたサービスの威力.これらについては,成果の一部を公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた実験を実施し,予定していたデータ収集を全て行なった.さらに,それらの多くに関して,ボールの回転数を明らかにした.残された一部のデータについては,平成26年度に分析する予定である.本研究において実戦場面から得られるデータ数には限りがあるため,それらを相対的に評価する目的で,これまでの関連研究から,次の3点の分析の必要性が認められた.(1)国際大会におけるサービスの回転数.(2)実験場面におけるサービスの回転数と動作.(3)多数の試合におけるラリー中の打球回数からみたサービスの威力.これらについて,大半の分析は終了した. 以上のように,当初予定していたデータの収集と分析に加え,新たに生じたいくつかの課題の検討を行ないながら,「卓球の球威を探る」という研究をほぼ予定通り進めることができていることから,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の最終年にあたる平成26年度には,これまでに十分なデータの得られていない日本トップレベルおよび日本地方レベルの各大会において撮影を実施する.撮影方法はこれまでと同じとする.撮影は,これまでと合わせて,各競技レベルにおいて男女8名以上,1名について20本程度のサービスの映像データが得られるようにする. また,平成25年度までの研究でその必要性が示唆されたこととして,これまでの関連研究から,1)国際大会におけるサービスの回転数,(2)実験場面におけるサービスの回転数と動作,(3)多数の試合におけるラリー中の打球回数からみたサービスの威力,に関する分析を行なう. 以上の結果から,ボールの回転数と対戦者のレシーブの成否との関係,打球フォームの類似性と対戦者のレシーブの成否との関係などを検討し,「卓球サービスの球威とはどのようなものか」について明らかにする.その際,本研究の主な仮説である次の2点の検証を行なう. (1)競技レベルが低くなるほど,サービスのボールの回転数と球威との正の相関が強い.(2)競技レベルが高くなるほど,サービスの打球フォームの類似性と球威との正の相関が強い. この研究は,卓球のスキルのメカニズムや競技特性の解明のみではなく,対戦型競技の実際の大会場面から高精度なデータを収集し分析するスポーツ科学分野の新たな方法の開発としても,その成果が期待できるものであり,重要な意義があると考える.このような観点からの考察も加え,研究成果をまとめる. 研究成果については,国内外の学会および学術誌,卓球をはじめとする様々な競技の各種講習会,および卓球専門誌などで随時発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は,科学研究費で予定していた経費の支出の一部を,別の予算から捻出することができた.また,データの測定方法を一部変更したことにより,いくつかの物品の購入を見送ることができた.これらのことから,平成26年度使用額が生じた. 平成26年度には,成果の積極的な公開を進めながら,卓球サービスの球威に関する新たなデータの収集,3年間の全データの分析,およびそれらのまとめを行なう.使用計画は次の通り.旅費:全日本選手権,静岡県下卓球選手権などでの撮影を実施する.全日本選手権では,宿泊を伴う撮影旅費が4名分(研究代表者1名と研究協力者3名)必要である.また,分析データに関する検討において,様々な専門家との意見交換を行なうための旅費が必要である.さらに,研究成果公開のための国内外の学会等参加のための旅費が必要である.人件費・謝金:2~3大会(計4~5日間)での撮影を予定している.この撮影には,各大会3名の補助が必要である.また,研究期間を通して,膨大な映像データなどの資料整理に3名の補助(6月;40時間/月)が必要である.その他:成果公開のための論文投稿,論文校閲などに関する経費が必要である.
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