研究課題/領域番号 |
24650386
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 隆夫 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (00249856)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生体電気インピーダンス / 高時間分解能 / Cole-Cole円弧 / 投球動作 |
研究概要 |
測定回路のノイズ対策と高機能コンピュータと連続サンプリング可能なA/D変換器による仕様向上について研究を進めた。 1.測定回路のノイズ対策 動作に伴うノイズの混入や電極の分極電位に伴うドリフトの影響をなくすために、ハイパスフィルタを乗算器の後に挿入した。さらに、10種類の正弦波定電流の位相を調整して、生体に安全は範囲でこれまでの実効値160μAより大きな実効値250μAを生体に通電することが可能となった。これにより、S/N比が改善された。 2.連続サンプリング可能なA/D変換器による仕様向上 インピーダンスの4パラメータを決定するためのデータの取得に要する時間は1.024 msであり、この繰り返し間隔を目標の2 msとすることができた。さらに、A/D変換器の追加と制御プログラムの作成により、インピーダンス以外に2つの加速度等の参照信号を同時に測定できるシステムを構築した。 3.データ収集・解析時間の短縮 データ収集において、データの保存形式をバイナリ型にして、データの保存時間、アクセス時間をこれまでより短くできた。また、ファイルサイズも1/6に圧縮できた。測定された10点のインピーダンスからCole-Cole円弧のパラメータをKH法という最適化数値計算によって求めていた。この際に必要な精度を落とさずに、計算回数が少なくなるように、このKH法の計算における最適なパラメータ(増倍率1.5、低減率0.5、最小変化量0.0004)を求めた。これにより、計算回数が約1/3に少なくなった。以上のデータ収集法と解析法の改善により、これまで200秒かかっていたデータ保存および解析時間が約20秒に短縮できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
測定回路のノイズ対策や測定システムの仕様向上において、当初予定した仕様向上の目標値と同様の結果が得られた。さらに、今後の研究の推進に必要な測定の多チャンネル化や解析時間の短縮なども実現することができた。 1.測定回路のノイズ対策 これまではノイズや分極電位による影響で測定が正しくできないことがあり、電極の貼り直しなどをしていたが、ノイズ対策と通電電流の増加により、安定した測定が可能となり、かつS/N比が改善された。 2.連続サンプリング可能なA/D変換器による仕様向上 インピーダンスの4パラメータを決定するためのデータの取得の繰り返し間隔を目標の2 msとすることができた。さらに、インピーダンス以外に2つの加速度等の参照信号を同時に測定できるシステムを構築できた。 3.データ収集・解析時間の短縮 これまでのシステムでは、データサイズが大きいこと、データの保存に時間がかかること、データ解析に時間がかかることが、繰り返しの測定・および解析することへの大きな障害となっていた。例えば10秒間のインピーダンスデータの保存・解析に200秒かかっていた。しかしながら今年度の研究成果により同じプロセスがわずか約20秒に短縮できた。 以上より、研究成果の学会などにおける発表はまだ行っていないものの、目標以上の成果も得られており、総合的に見て概ね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
判別したい投球動作として、 ・通常の投球(前腕部が自然に回内)、・前腕部が強く回内する投球、・前腕部を回外する投球、・肘関節を強く伸展させる投球の4つの投球動作を取り上げる。なお、後者3つは、肘関節などに故障を起こしやすい代表的な投球動作である。以下の項目に従い、研究を進める。 1. 投球動作判別のための最適な電極装着位置の決定 これまでの研究では、前腕部内側部に電極を装着し、前腕部中央部のインピーダンスを計測してきた。このインピーダンスを用いれば、手関節の6方向の運動を判別的中率95.0%の高精度な判別が可能であることがわかっている。しかしながら投球動作は、複合動作であり、これを検出するためのより感度の高い電極装着位置について検討を行う。 2.投球動作とインピーダンス変化との対応 投球動作は、多関節の屈曲伸展が複合している。投球動作の4つの相における各関節の動きとインピーダンスのパラメータの変化との対応を明らかにする。特に、前述の4投球動作の違いである前腕部の回内・回外の違いや、肘関節の過伸展の影響がどのようにインピーダンスのパラメータに影響しているか、その生成機序を明らかにする。 3.動作判別のためのパラメータ決定と判別分析 前述の検討結果より、投球動作の判別のためのパラメータを決定し、判別分析を行い、判別的中率について検討を行う。本研究の投球動作の判別においては第3相のインピーダンスのパラメータが大きく寄与するものと考えられる。判別的中率が低いときには、パラメータの再検討を行うこととなる。 4.電子情報通信学会MEとバイオサイバネティックス研究会(東京 他)などや国際会議にて成果発表し、例えばMedical & Biological Engineering & Computingに論文投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の経費として、国際インピーダンス学会(ICEBI2013)への調査研究旅費を考えていたが、その学会が平成25年4月に開催されるため、この旅費分として約22万円を次年度分として繰り越すこととなった。 次年度分の直接経費80万円を以下の項目に対して執行する。 1.角度計や加速度計などの生体情報計測のセンサを30万円で購入する。 2.調査および研究発表の旅費として20万円を充てる。 3.データの整理などに対する人件費・謝金として10万円を充てる。 4.論文投稿・校閲に対して20万円を充てる。
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