研究課題/領域番号 |
24650386
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中村 隆夫 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (00249856)
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キーワード | 生体電気インピーダンス / 高時間分解能 / Cole-Cole円弧 / 投球動作 / 判別分析 |
研究概要 |
判別したい投球動作として、 ・通常の投球(前腕部が自然に回内)、・前腕部が強く回内する投球、・前腕部を回外する投球、・肘関節を強く伸展させる投球の4つの投球動作を取り上げた。なお、後者3つは、肘関節などに故障を起こしやすい代表的な投球動作である。以下の項目に従い、研究を進めた。 1. 投球動作判別のための最適な電極装着位置の決定・・・インピーダンス測定のための電位電極(P+,P-)を前腕部の4つの筋上の皮膚に装着した。すなわち,橈骨手根屈筋(FCR),尺骨手根屈筋(FCU),腕橈骨筋(BR),総指伸筋(ED)であり、それぞれの筋上において肘関節側(E),中央部(C),手関節側(W)の3種類の位置とした。これら12カ所それぞれの測定部位において、掌屈、背屈、橈屈、尺屈、回内、回外の6動作を行った際のインピーダンスの5パラメータの変化率や繰り返し測定の変動係数など5つの評価指数を定義し、計150個の指標について比較した。以上より橈骨手根屈筋の手関節側FCRWにおいて150項目中81項目のパラメータが最適となったため,FCRWが最適な電極位置となった。 2.動作判別のためのパラメータ決定と判別分析・・・投球動作の判別には,インピーダンスの5パラメータの変化率を採用した。そして、判別分析のためのパラメータとして、ボールを加速する際に背屈が最大となる時刻から0.1,0.2,0.3,0.4,0.5 秒後のそれぞれのパラメータの変化率を用いた。その結果、判別的中率が従来の95.8%を上回る96.7%となり、より高精度な判別が可能となった。 3.日本生体医工学会中国四国支部大会と電子情報通信学会MEとバイオサイバネティックス研究会にて研究成果の一部を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、前腕部内側部に電極を装着し、前腕部中央部のインピーダンスを計測してきた。このインピーダンスを用いれば、4つの投球動作(通常の投球、・前腕部が強く回内する投球、・前腕部を回外する投球、・肘関節を強く伸展させる投球)を判別的中率95.8%で判別が可能であった。 本研究においては、まず前腕部において12カ所の測定部位を設定し、この中でも最も6つの基本動作(掌屈、背屈、橈屈、尺屈、回内、回外)に対するインピーダンスパラメータの感度が高い、もしくは繰り返し測定の再現性が高いなどの観点より、動作検出に最適な測定部位が橈骨手根屈筋の手関節側であることがわかった。 この部位にて、新たに投球判別のためのパラメータを設定して投球判別したところ、従来の測定部位およびパラメータで得られた判別的中率95.8%を超える96.7%の判別的中率を得ることができた。 以上より、研究成果の論文発表はまだ行っていないが、目標以上の成果が得られており、総合的に見ておおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
4つの投球動作についての判別が可能であることが、実際のグランド等で使用するには測定システムの可搬性が低い等の問題点があった。そこで以下の点について検討が必要となる。 1.測定システムの小型化・省電力化・・・現在の測定回路において、周波数を発振する部分は、既製の関数発生器(function generator)を用いているが、AC電源が必要であり、可搬性が低い。よって、OPアンプなどによりバッテリー駆動のアナログ回路を設計し作製する。測定に必要なA/D変換器はデスクトップパソコン対応のものを使用しているが、これも可搬性の高いノートパソコン対応のA/D変換器に変更する必要がある。しかし、これは、現在のそれとは比べ基本仕様が劣るため、測定方式の変更などを行う必要がある。またこれの制御プログラムの作成する必要がある。 2.各球種の投球動作とインピーダンス変化との対応の明確化・・・ストレート、カーブ、シュートなど各球種の投球動作とインピーダンスパラメータの対応を明確化しして、各球種をの投球動作の判別のための、最適電極位置の探索を行う。 3.動作判別のためのパラメータ決定と判別分析・・・前述の最適電極位置の決定後に複数の被験者に対して実験を行い、判別分析のためのパラメータ決定と判別分析の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究会等での発表後に論文投稿を予定していたが、研究会の開催が当初の見込みよりも遅い3月下旬となり、平成25度中での論文投稿が難しくなったため、このための予算が未使用となった。 発表後に予定していた論文投稿を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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