研究課題/領域番号 |
24650387
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 昌廣 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40128327)
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研究分担者 |
石井 良昌 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00397978)
田中 信行 日本体育大学, 体育学部, 教授 (90339490)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脳性麻痺 / 関節可動域 / 運動能力 / 体力 |
研究概要 |
本年度の研究課題は,成人脳性麻痺者の関節可動域および運動能力測定を実施することであった。さらに,多変量解析法を用いて,関節可動域の特徴によって成人脳性麻痺者を分類することを目的とした。 被験者は,日本と韓国の成人脳性麻痺者の男女83人(男性55人および女性 28人)であった。関節可動域は,関節角度計を使用して肩関節,肘関節,手関節,股関節,膝関節,および足関節を測定した。運動能力テストとして,握力、肩筋力、50m走、10m往復走、立ち幅とび、反復横とび、ソフトボール投げ、体前屈、上体起こし、10mシャトルランおよび片足立ちを測定した。 関節可動域の特性に応じて脳性麻痺者を分類するためにクラスター分析を行った。その結果、三つのグループに分けられることが明らかとなった。グループ1は全身の関節可動域が広いグループであった。グループ2は下肢の関節可動域が狭いのに対し,上肢は比較的関節可動域の制限がない者であった。グループ3は,上肢より下肢の関節可動域が広いグループであった。この三つのグループ間で,運動能力テスト結果を比較したところ,グループ1の成績が最もよく,グループ3が最も悪い結果であった。 関節可動域の特性によって,脳性麻痺者の分類が可能であり,運動能力は関節可動域の特徴に依存していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は,成人脳性麻痺者の運動能力を関節可動域をもとに評価し,将来的には運動能力改善のためのトレーニング法の開発につなげる基礎的な資料を収集することである。その中で,平成24年度は自立歩行が可能な成人脳性麻痺者を対象として,関節可動域を測定し,その資料と身体の基礎データ(身長,体重,年齢等の生体計測値)に基づき被験者をグループ分けすることであった。さらに,運動能力テストを実施し,関節可動域で分類したグループ間の運動能力の違いを検討することであった。 平成24年度中に,成人脳性麻痺者83名の測定を終えることができ,関節可動域の特性によって脳性麻痺者の分類をすることが可能であることを証明した。また,運動能力テストも実施し,分類したグループ間での比較を行った。 このように,平成24年度には交付申請書の研究目的をほぼ達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には,平成24年度の研究において分類した三つのグループから,それぞれ10名程度の成人脳性麻痺者を対象として有酸素能力の測定を行う。三つのグループ間の有酸素能力の差を検定する。 有酸素能力の測定には,関節可動域で分類した被験者ごとに運動可能な腕回転エルゴメーター,自転車エルゴメーター,リカンベントエルゴメーターあるいはトレッドミルを使用する。各被験者に漸増負荷法による最大運動を行なわせる。 測定項目は呼吸機能(換気量,酸素摂取量,二酸化炭素排出量等),循環機能(心拍数)および血中乳酸である。グループ分けの妥当性についてデータ解析を行なう。最大作業を行うことができない場合は,心拍数が170あるいは150の時の作業強度(それぞれPWC170およびPWC150)を求める。各クラスにおいて標準的な有酸素能力測定値を算出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本において,被験者である脳性麻痺者を数多く測定することは極めて困難である。一方,韓国には脳性麻痺者専用の施設があり,平成24年度はその施設の協力を得て数多くの脳性麻痺者の資料を得ることができた。平成25年度も韓国ソウル市にある脳性麻痺者の施設の協力のもと研究を遂行する予定である。そのために,韓国ソウル市までの資料集旅費が必要である。なお,韓国ソウル市では誠心女子大学崔教授の協力を得ることになっている。その際,実験遂行のための謝金および消耗品費が必要となる。
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