本研究の目的はパラリンピックに出場する障がい者スポーツ選手への経済的支援の拡充に向けた資料を作成することである。障がい者スポーツ選手への経済的支援がパラリンピックでの競技成績に如何なる影響を及ぼしているかを検討するため、パラリンピックロンドン大会(以下、ロンドン大会)での競技成績と経済的支援の差異を日韓比較した。 1)ロンドン大会での日本のメダル獲得数は金メダル5個、銀メダル5個、銅メダル6個の計16個であった。一方、韓国は金9個、銀9個、銅9個の計27個であった。2)日韓で出場競技数と選手数が異なるため、メダル獲得率を算出した。日本は17競技(135選手)に参加し、金メダルの獲得率は23.5%(4競技)、メダル全体の獲得率は35.3%(6競技)であったが、韓国は13競技(88選手)に出場し、金メダル獲得率は46.2%(6競技)、メダル獲得率は61.5%(8競技)であった。3)障がい者スポーツに対する2012年度の予算は日本の8.1億円に対し、韓国は439.6億ウォン(約30.5億円)であった。4)ロンドン大会のメダリストへの報奨金は、日本は金100万円、銀70万円、銅50万円であったが、韓国は金6000万ウォン(約416万円)、銀3000万ウォン(約208万円)、銅1800万ウォン(約125万円)であった。5)さらに韓国はメダリストに対して、金は月80万ウォン(約5.5万円)、銀は月60万ウォン(約4.2万円)、銅は月42万ウォン(約2.9万円)の年金を生涯支給する。 障がい者スポーツ選手への日本の経済的支援は韓国に比べて乏しく、パラリンピックのメダル獲得数の差異に影響している可能性が推察された。また韓国のメダル獲得率は日本より高く、韓国はメダル獲得の可能性が高い競技に経済的支援等を重点的に行い選手育成・強化を図っていることを窺わせた。※為替レートは2012年8月29日時点。
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