本研究は、指導手順の組替による指導効果を検証するため、以下の学習事例の作成と実験を実施した。剣道の場合,下肢は送り足,上肢は空間打突従来型からの学習(従来型)が一般的だが,本研究では、上肢は実際の打突,下肢は踏み込み足から学習(組替型)する事例を作成し,正面打突の試技により,打突時の上肢(竹刀操作)と下肢(踏み込み動作)の協調に及ぼす効果について,従来型の指導手順を用いた学習者と比較,検討した。 事例作成については、一定期間(360分:90分15コマ中の2~5回目の授業),従来型と組替型の異なる2種類の指導手順で指導し、2種の学習事例を作成した。24年度は,前期は「従来型」、後期は「組替型」により指導し、25年度は,前期の学習者を「従来型」と「組替型」に分け,同時展開で異なる学習事例を作成した。 なお、「従来型」と「組替型」との打突時における上肢と下肢の協調に及ぼす学習効果を比較するため,2回の実験を実施した。24年度は,運動条件を打ち込み台への正面打突の試技とし,測定は授業5コマ終了後に実施した。撮影した動画(HDR-CX560V,Sony 社製)から,Frame-DIAS V(DKH)を用いて踏み込み足接地と打突の時間差を算出した。 25年度は,運動条件を同一の有段者に対する正面打突の試技とし、被検者の身体の38点及び竹刀に3点の反射マーカーを貼付して打突を行わせ,その際,打突動作は光学式モーションキャプチャーシステムMAC3D(Motion Analysis)を用い、踏み込み足の地面反力は多分析フォースプラットフォーム(Kistler)を用いてサンプリングした。 2回の実験において,上肢と下肢の協調については,組替型の方が打突と踏み込みの時間差が少なく,有段者(剣道三~四段)に近い値を示した。地面反力においても同様の結果となり、組替型の指導は上肢と下肢の協調及び踏み込み動作の早期習得に効果的であることが示唆された。
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