【目的】運動強度の増加に伴い乳酸作業閾値(LT)が出現する。また、走速度の増加は比較的低速度までは主にストライドの増加によってもたらされる。そこで、本研究では、走行時の血中乳酸とストライドより、個人間を標準化する法則性が存在するか否かを検討し、 LT時速度推定がストライドによって可能となるかを明らかにすることを目的とした。 【方法】実験はストライドを実測する条件と、GPS・加速度計ウォッチによりストライドを判定する条件の2実験が実施された。両実験とも日常的にランニングを愛好し、フルマラソン完走を目的とする市民ランナーを被験者とした。被験者に1000m漸増走を5セット実施させ、各セット走行時のストライド、血中乳酸濃度、心拍数を得た。得られたLT時の速度・心拍数と、セットごとのストライド・心拍数から「予測最大ストライド」「予測LT時ストライド」「推定LT時ストライド」「推定LT時速度」を算出した。検討項目は推定LT時速度と60%、65%、70%、75%、80%、85%HRmax速度とし、実測LT時速度と検討した。統計処理にはPearsonの相関係数を用い、統計誤差の検討にはBland-Altman plotsを使用した。 【結果】ストライド・心拍数による推定LT速度は実測LT速度と高い相関を示した。非観血な運動指標として多用されている、心拍数による推定LT速度においても同様に高い相関が認められた。しかし、系統誤差についてはストライド・心拍数から求められた推定LT時速度が最も少ないものであった。 【結論】ストライド・心拍数から求められた推定LT時速度は,他の非観血なLT速度推定より精度が高いものと判断された。
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