研究課題/領域番号 |
24650406
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
下村 吉治 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30162738)
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研究分担者 |
北浦 靖之 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90442954)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分岐鎖アミノ酸 / 分岐鎖アミノ酸分解系 / コンディショナルノックアウトマウス / 脳・神経 |
研究概要 |
脳において、グルタミン酸などの一部のアミノ酸は神経伝達物質として機能しており、脳内で合成される重要なアミノ酸である。そのグルタミン酸合成において、アミノ基供給源となる主要なアミノ酸が分岐鎖アミノ酸(BCAA)である。全身でBCAA分解を促進した遺伝子改変マウス(branched-chain ketoacid dehydrogenase kinase-knockout (BDK-KO)マウス)では、成長後にてんかん発作を引き起こすことが明らかにされたが、この症状が発症する原因は、全身における遊離BCAA不足によるものか、または脳のみにおけるその不足に起因するか不明である。本研究では、脳・神経特異的にBCAA分解を促進してBCAAが不足したマウスを作製し、てんかん発作の原因と運動能力における脳の遊離BCAAの役割を検討することを目的とした。脳・神経BDK-KOマウスの作製は、Cre-loxPシステムを用いて組織特異的に標的タンパク質を欠損させる方法(Bruning, et al., (1998) Mol. Cell 2:559-569)を用いた。まず、BDK遺伝子のエクソン9~12をloxPで挟み込んだターゲティングベクターを入手し、これをES細胞へ形質移入し、薬剤耐性クローンの単離を行い、96個のクローンES細胞を得た。これらの細胞から、相同組換えが確認され80%以上で正常な核型が確認された4クローンをマウス胚4細胞期にインジェクションした。その結果、13匹のキメラマウスが得られたので、C57BL/6系統マウスと交配して繁殖したところ、BDK遺伝子をloxPで挟み込んだマウス(Bckdk-floxed (Neo+) ヘテロマウス)を得ることができた。すなわち、インジェクションしたES細胞は生殖系に移行し、組織特異的BDK-KOマウス作製の基礎となるマウスの作成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンディショナルノックアウトマウスを作製する場合には、目的のベクターを移入した細胞が生殖細胞に移行したキメラマウス(BDK遺伝子をloxPで挟み込んだマウス(BDK gene-floxedマウス))を作製する必要があるが、最初のトライアルではそのキメラマウスを作製することができなかった。2回目のトライアルではそのキメラマウスの作製に成功したので、コンディショナルノックアウトマウスを作製するための基となるマウスの作製に成功した。この理由により、研究の進度はやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
BDK gene-floxedマウスを、脳・神経特異的に発現するエノラーゼのプロモーターを持ったCreリコンビナーゼ遺伝子を導入したトランスジェニックマウス(B6.Cg-Tg(Eno2-cre)39Jme/J, ジャクソン研究所より入手可能)と交配することにより、脳・神経で発現したCreリコンビナーゼによりloxPで挟み込まれたエクソン部分を欠失させ、脳・神経においてのみBDKが欠損するマウスを誕生させる。 この脳・神経特異的BDK-KOマウス(8週齢)における血液成分、次に述べる組織重量、およびそれらの組織のBDK mRNAとタンパク質量をそれぞれNorthern blotting(またはリアルタイムPCR)とWestern blotting法により測定する:脳、骨格筋、心筋、肝臓、腎臓、脾臓、肺、睾丸(雄)、脂肪組織。 さらに、上記の組織のBDKの基質となるbranched-chain ketoacid dehydrogenase (BCKDH)複合体の活性と酵素タンパク質量を、それぞれ分光学的方法およびWestern blotting法により測定する。脳や骨格筋などの一部の組織ではBCKDH複合体活性がかなり低く分光学的方法で測定できない場合には、研究代表者らが既に確立したα-ケト[1-13C]イソカプロン酸を基質とする活性測定法 (Anal Biochem 399: 1-6 (2010)) で分析する。全身性BDK-KOマウスは、生後3週齢において「尻尾をもってぶら下げる」と後肢を抱え込む動作をし、生後約6か月で尻尾ぶら下げの刺激によりてんかん発作を起こすことが報告されている(Joshi et al, Biochem J 400:152-162 (2006))ので、本研究で作製するマウスにおいても同様なフェノタイプを示すか否かを観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、コンディショナルBDK-KOマウスの維持、正常マウスの購入、飼料の購入、生体成分および酵素活性分析、成果の発表等の費用として使用する。
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