研究概要 |
骨格筋の特性は、運動トレーニングや環境、栄養、発育・発達、老化などに伴って変化することが知られている。筋収縮のエネルギー源は、アデノシン・3・リン酸 (ATP) であり、その産生には有酸素的および無酸素的エネルギー代謝が重要な役割を果たしているが、クレアチン含有量も顕著な影響を及ぼすことも報告されている (AJP Cell Physiol, ’94; Jpn J Physiol, ’94 & ’95)。しかしながら、骨格筋の代謝・収縮特性に変化を誘発する詳細なメカニズムは必ずしも明らかではない。そこで、この調節メカニズムを追求するために、C57BL/6オスマウスにクレアチン・アナログである-guanidinopropionic acid (-GPA) を経口投与し、体内クレアチン含有量を減少させた場合の後肢足底筋の特性を追求した。生後3週齢のマウスを任意に2群に分け、1群には通常の粉末飼料、他群にはその飼料に1%濃度で-GPAを混入したエサを毎日同量ずつ与えた。発育に応じてエサの量は漸増したが、3週目から1日1 g/匹の一定量とした。水は自由に与えた。4および8週目に体重測定後、ネンブタールの腹腔内投与による麻酔下で頸静脈より採血した。その後遠心分離し、血清でクレアチン含有量を測定した。また、足底筋を両後肢より採取し、右筋は生体内長にストレッチした状態で(液体窒素で冷却した)イソペンタン中で瞬間凍結した。これらでは、横断切片でミオシン重鎖発現を分析した。左筋では、網羅的に遺伝子発現を分析した。特に8週目ではクレアチン枯渇と遅筋化が顕著であったが、すでに4週目から遅筋化またはミトコンドリア代謝に関係する遺伝子発現が亢進した。クレアチン枯渇が筋の遅筋化を誘発することが示唆された。
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