研究実績の概要 |
【研究を行った目的】血栓症予防効果を有すると期待されるナットウキナーゼをヒトが経口摂取した場合の基礎的効果を検証することを目的に、本研究を実施した。 【実施した研究方法】平均年齢22.3歳の健常男性計15名を対象に、納豆2~3パックに含有される量と同等量であるナットウキナーゼ2,000F.U.(フィブリン分解単位)を単回摂取させ、摂取前および摂取2時間後から8時間後まで2時間毎に採血を行い、血液中の主要な凝固系/線溶系因子に及ぼすナットウキナーゼの摂取効果を検証した。 【得られた結果】ナットウキナーゼ2,000F.U.の単回摂取により、内因性凝固因子活性化の指標である活性化部分トロンボプラスチン時間は有意に延長し(=血液凝固抑制効果)、同様に、凝固系因子のもっとも重要なものの1つである凝固系第8因子の有意な低下を認めた(=凝固抑制効果)。さらに、体内における重要な凝固阻止因子の1つであるアンチトロンビン濃度も、有意な増加を認めた(=凝固抑制効果)。一方、形成された血栓を溶解する線溶系因子も、ナットウキナーゼ2,000F.U.の単回摂取により影響を受け、フィブリンおよびフィブリノーゲンの分解産物であるFDP、および架橋化されたフィブリンの分解産物であるDダイマーが有意な増加を示した(=血栓溶解作用)。ただし、これらの変化は、いずれも正常濃度範囲内での変動であった。 【本研究の意義】本研究の実施により、(研究者が知る限り世界で初めて)ヒトにおいてナットウキナーゼの単回摂取により、主要な血液凝固系因子を抑制し、線溶系を活性化させることにより、血栓症予防効果を有する可能性が示唆された。 【今後の発展性】血栓形成が促進される環境下でのナットウキナーゼ事前摂取による血栓症予防効果、および患者の血栓症治療への応用について、さらなる検討が有効と考えられる。
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