研究課題/領域番号 |
24650414
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所) |
研究代表者 |
福 典之 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40392526)
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研究分担者 |
田中 雅嗣 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 部長 (60155166)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トップアスリート / エクソン / 塩基配列決定 |
研究概要 |
我々は、これまでに運動能力と関連がある遺伝子多型をシステマティックレビューにより56遺伝子座において89多型を抽出した。また、ジャマイカ人、アメリカ人、および日本人トップアスリートのゲノムワイド関連解析(GWAS)を進めている。この解析から見つかった多型の中には、機能的意義が不明なものも少なくない。これを解決するには、その多型の周辺の塩基配列を決定し、その多型と強く連鎖した機能的な多型を抽出する必要がある。また、これまでの解析で運動能力を規定する要因を全て説明することは難しい。そこで本研究では、ヒトゲノム上に点在するすべてのエクソン(4500万塩基対)の塩基配列を次世代シークエンサーで明らかにし、運動能力に関連する機能的な多型の同定を試みた。国際大会で銅メダル以上を獲得しているジャマイカ人スプリンター4名およびコントロール1名が対象として、頬粘膜から総DNAを抽出した。200~500 ngの総DNAからエクソンのみをキャプチャー(捕捉)して取り出し、PCR法にて増幅した(全エクソン増幅)。その後、次世代シークエンサーSOLiD4を用いて、全エクソン領域の塩基配列を決定する。決定した塩基配列から多型を抽出し、スプリンターに特徴的な塩基置換をAvadis NGSを用いて抽出した。スプリンター4人中2人に見いだされた、特徴的な塩基置換が見つかった。この塩基置換が存在する遺伝子は骨格筋における速筋線維と遅筋線維の量を制御している。また、この遺伝子をマウスで過剰発現させると、骨格筋の毛細血管網が密になると同時に、ミトコンドリアが増生し、遅筋の割合が増え、速筋の割合が減る。その後、この塩基置換を直接塩基配列決定法により決定したが、この塩基置換は認められなかった。今後は、日本人スプリンターも含めさらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、4名のジャマイカ人スプリンターおよび1名のコントロールの全エクソンを次世代シークエンサーにより解析した。しかしながら、次世代シークエンサーで解析し、確認できた塩基置換が、その後の直接塩基配列決定法によって解析された塩基置換の有無の確認においては必ずしも一致しないという結果が得られた。この理由として、次のことが考えられる。1)今回、解析したDNAは血液由来でなく口腔粘膜由来である。すなわち、バクテリアDNAが混入している可能性がある。2)DNAの初期濃度が低い。したがって、今後は、よりDNAの純度が良く、DNAの抽出効率の良い唾液由来DNAもしくは血液由来DNAを用いて解析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのジャマイカ人を対象にした検討から、口腔粘膜由来のDNAからエクソンを増幅し、塩基配列を決定によりシークエンスエラーが起きる頻度が高く、それを直接塩基配列決定法で各々確認するのは難しいのが現状である。そこで、より良質なDNAを用いることが望ましい。そこで次年度は、既に比較的良質なDNAが抽出できているオリンピックでメダルを獲得した選手を含む日本人トップスプリンターを対象に検討する。ジャマイカ人および日本人のスプリンターで得られた塩基置換を比較することで、ジャマイカ人トップスプリンターと日本人トップスプリンターの相同・差異を明きからにできる可能性がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本人のヒトゲノム上に点在するすべてのエクソン(4500万塩基対)の塩基配列を次世代シークエンサーで解析し、トップアスリートの運動能力を規定する塩基置換を同定する。このため遺伝子解析試薬に83,9905円計上する。また、成果発表のためヨーロッパスポーツ科学学会への参加費およびグラスゴー大学での共同研究打合せに計400,000円を計上する。さらに、論文作成英文校正費に100,000円を計上する。
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