研究課題
Mayer波帯域における血圧-心拍数間の線形相関性は,安静時に強く,映像刺激入力や姿勢変動の際に弱くなる.この現象は,「安静時には主として心拍数調節が行われ,環境変化時には心拍数調節ばかりでなく血管抵抗調節が行われる」という仮説(心拍数調節と血管抵抗調節の役割分担仮説)で説明できる可能性がある.本研究では,この仮説を検証するとともに,この仮説に基づいてゲーム用脈波センサを利用した日常的に使用できる血圧反射機能推定システムの開発を目的とした.本年度では,ビデオカメラからの身体映像情報を処理することにより,非接触かつ遠隔的に血圧情報を取得し,この情報に基づいて血圧反射機能を推定するシステムの開発を行った.まず,心臓から見た近位部である顔と遠位部である掌の映像信号のうち緑色成分の輝度平均値の時系列を求め,雑音成分を除去することによって対応する部位の脈波信号を得る.次に,各部位をヒルベルト変換することによってそれぞれの信号の瞬時位相を求め,2つの瞬時位相の差を血圧信号の代用とした.健常被験者20人に対して呼吸停止による血圧変動を誘起し,そのときの連続血圧計から得た収縮期血圧と上記の瞬時位相差の相関を求めたところ,相関係数が約0.6の正の相関が得られた.これに対して,従来用いられてきた心電図信号と指尖光電脈波から計算される脈波伝搬時間は,収縮期血圧と相関係数が約0.4で逆相関した.以上の結果は,前年までに得られた,心拍数の平均値で規格化された標準偏差CVRR,および脈波の振幅値に関するその高周波成分に対する低周波成分の比の自然定数であるμPAの2つから高い相関係数で年齢を推定できる結果と合わせることによって,血圧から心拍数までの応答感度として自律神経機能の低下を定量的に推定する方法となり得る可能性があることがわかった.
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Advanced Biomedical Engineering
巻: 4 ページ: 1-6
10.14326/abe.4.1