研究課題/領域番号 |
24650416
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
上山 真知子 山形大学, 教育文化学部, 教授 (80344779)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 東日本大震災 / アンケート調査 / 児童・生徒 / 養護教諭 / 身体的不調 / ハイリスク / 子どもの死亡率 / 家族の問題 |
研究概要 |
東日本大震災におおいて、被害を受けた地域の児童・生徒の心身の健康の状態に関する調査を行った。調査は、公立学校に勤務する養護教諭を対象にして、調査時点の子どもたちの様子について、無記名のアンケートへの記入を依頼する形式で実施した。 アンケートの対象地域は、沿岸部の被害が甚大だった地域の2都市と、内陸部で比較的被害が軽かった地域を選定した。アンケートに回答した養護教諭の人数は、約150名で、回収率は平均で70%であった。沿岸地域では、ほぼ全校から回答が寄せられた。内陸部では、50%の学校から回答があった。 内陸部の学校については、現在、ほとんどの学校で、児童生徒は落ち着いて暮らしているという結果だった。 被害が甚大だった地域では、A市では、ほとんどの学校で現在は落ち着いている状況にあるという報告だった。B市では、40%の学校で、落ち着かないという回答があった。B市では、東日本大震災当時、児童・生徒の死亡者が多く、今回の調査の結果、子どもの人口に対して約100名に1人の子どもが死亡していた。一方、A市では壊滅的な被害を受けたにも関わらず、子どもの死亡率は低いことが明らかになった。 自由記述では、多くの問題点が記述されていた。まず、震災前からハイリスクにあった子どもで、問題の深刻化がみられるという指摘があった。ハイリスクの内容としては、子ども自身と家族の問題の両方についての記載があった。震災後顕在化してきた問題点としては、経済状況の悪化により、離婚や家族内のトラブルの発生が、子どもの心身の健康状態に影響しているのではないかという懸念が記載されていた。 その他、震災後、けがの多発が目立ち、アトピー性皮膚炎、喘息などの症状が目立つようになったという記載もあった。 PTSDのような症状はほとんどみられないとする一方で、身体的な不調が多くなっている点が、心配事項として挙げられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、ほぼ目標を達成することができた。特にアンケート調査においては、沿岸部の被害が甚大だった地域において、小学校から高校までの校種においてアンケート調査を実施し、高い回答率を得た。また、自由記述の欄に、多くの養護教諭が現在の問題について、記載していた。この結果を分析することで、被災後2年目の、子どもたちの心身に関する問題を把握することができた。 以上の調査によって得られた結果を、養護教諭へのコンサルテーションにおいて活用することができた。 解析した結果を、国際学会や国内の学会において発表することで、多くの研究者からアドバイスを得ることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度同様に、アンケート調査を実施する。 今年度は、養護教諭に対して、個別の面接を行う。 以上の調査結果に基づいて、被災地における3年目の問題を明らかにする。 得られた研究結果を、ハイリスクな状態にある子どもたちに対する養護教諭の働きかけのために活用し、コンサルテーションを行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1、調査のための費用(アンケート送信と返信のための費用、調査のための交通費) 2、国際学会発表のための費用 3、国内学会発表のための費用 4、その他の費用(備品等)
|