研究課題/領域番号 |
24650416
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
上山 真知子 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (80344779)
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キーワード | 東日本大震災 / アンケート調査 / 児童・生徒 / 養護教諭 / 心身の不調 / ハイリスク / 子どもの死亡率 / 家族の問題 |
研究概要 |
東日本大震災において、津波の被害を受けた2都市(A市、B市)の、6歳から15歳までの子どもたちの、心身の健康状態に関する調査をおこなった。被災地域の子どもたちに対する直接の調査では、時としてフラッシュバック現象を起こす可能性があるため、2都市の公立学校に勤務する養護教諭を対象としたアンケート調査を実施した。今年度は、2年目の実施である。回収率は、平均で73%であった。前年度からの継続している教員のアンケート数は、147であった。 2013年度に比べると、A市とB市の様子には変化が見られた。子どもが落ち着かないと答えた養護教諭の割合は、A市では0となり、B市では10%であった。子どもの死亡率が高かっB市では、養護教諭から見ると、落ち着きのない子どもが多いと感じられていることがわかった。 不定愁訴、骨折、肥満、皮膚疾患といった身体的な問題については、B市において、依然として懸念される問題であることがわかった。 一方、基幹産業が打撃を受け、親の経済的な状況が厳しいA市においては、養護教諭は、家庭状況において格差が生じており、子どもへの影響があると考えていることが分かった。A市では、不登校・不登校傾向、無気力などへの懸念が自由記述に記載されていた。 さらにA市においては、震災後3年目に入った現状において、破壊された地域の状況が復興しないまま、子どもたちの生活空間が狭められたり、移動の自由が奪われているという状況を懸念する記載があった。校庭が仮設住宅によって狭められ、子どもたちが自由に遊べなくなったという問題、さらに、スクールバスでの登下校の時間が長くなり、子どもが疲労している、子ども同士が地域で遊べなくなったといった記載もあった。 震災直後、子どもたちは予想以上に生活に適応していたが、3年目になり、解決されない社会的な状況に疲弊し始めている様子を知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、ほぼ目標を達成することができた。アンケート調査においては、平均で73%の回収率であった。自由記述の欄に、多くの養護教諭が、問題と考えていることについて記載を行った。このアンケート結果を、各教育委員会に送付している。また、希望する養護教諭に対しては、コンサルテーションを行った。 24年度から引き続き、国内外の学会おいて、結果の発表を行い、国内外の研究者と意見交換をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
24年度、25年度同様にアンケート調査を実施し、震災後の経年的な変化について検討を行う。 養護教諭と各教育委員会に対して、結果を返し、要望があればコンサルテーションを実施する。 国内外の学会等で、研究成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
アンケート発送のための切手等の物品の一部に、24年度の残を使用したため。交通費については、訪問校からの迎えがあったケースがあり、使用しないで済んだため。 26年度のアンケート用紙発送のための物品購入費に充てる予定である。
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