平成26年度も、東日本大震災において津波の襲来を受けて被災した宮城県の沿岸部の公立小・中学校に勤務する養護教諭を対象として、子どもの心身の健康状態に関するアンケート調査を実施してきた。養護教諭からの情報と実感は、被災地の子どもの心身の健康状態や現状の問題を把握する上で有効である。調査結果については、各地域個別の結果とともに、他の地域との比較結果を行い、フィードバックした。養護教諭がアンケート結果をみながら、各地域の子どものヘルスニーズを把握するために活用することができた。平成26年度の結果を検討したところ、以下のような状況が明らかになった。アンケートの回収率は、約70%であった. 1.大きな被害を受けた学校でも、PTSD症状はほとんど見られなかった。2.以下のような疾患が、震災前に比べて増加していた。皮膚疾患、喘息などの呼吸の疾患、感染症の拡大と長期化、骨折などの怪我の多発、消化器系を中心とした不定愁訴、などである。3.不登校は、震災直後は減少したが、家族、社会経済的な要因の悪化に伴い、再び増加に転じ、しかも悪化する傾向にある。4.被災直後より、子どもが落ち着かないと答えた養護教諭の割合が高かったのは、今回の震災によって死亡した子どもの割合が他地域より高い地域であった。子どもの人口比率において、死亡率が1%近い場合には、子ども達の不定愁訴が高まる傾向にあった。5.子どもの不安定さは、必ずしも被害の深刻さとは相関していなかった。6.今年度は特に、貧困などの家庭の問題を懸念する養護教諭の割合が増え始めた。学校全体が落ち着いているという感想があった一方で、震災前から個人的危機を抱えている子どもたちの問題が顕在化し、深刻化している様子が報告されている。
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