従来船員の健康管理は、船員手帳制度に依って乗船前に急性期の疾患、感染性疾患、発作性疾患など長期航海に不適切な疾患の発見が中心であったが、近年船員の高齢化が進み生活習慣病対策のニーズが高まっている。しかし船内生活は食事、身体活動、睡眠、嗜好品、ストレス解消などにおいて様々な制約があるためその実践は困難な面がある。本研究は、これまであまり行っていなかった船上における健康管理を、海上通信を利用して陸上から支援する遠隔医療システムの開発と実証実験を行ったものである。 ・船舶遠隔健康管理によって得られた生活習慣データのまとめ:日本健康教育学会と日本航海学会に口演発表、日本航海学会に論文掲載。 ・船舶遠隔健康管理システムの改善:船の寄港地は多くは市街地から離れており郵便ポスト投函も容易ではなく文書の受け渡しには人が船に行って行わなければならない。したがって船員にアンケート(毎日聞くほどでもない生活習慣や健康についての問診やシステムの評価の質問など)をとる際にも文書による実施では回収率が大幅に下がる。そこでアンケートをオンライン化しスポットで行えるようにした。またサーバ側・クライアント側ともに相手側からコメントがあった場合の通知機能、船員データで緊急性の高い異常値に関するアラーム設定を強化した。 ・内航船における実証実験継続:平成船舶遠隔健康管理システムを実際の内航船に搭載し実証実験を継続した。船員側の意見を聴取し、使いやすさについての課題等実用化に向けた知見が得られた。 ・船上の健康情報に基づく保健指導(保健教育):各人のデータのグラフと、医師・管理栄養士からのコメントを付けた個人レポートを作成し配布した。実用化のために個人レポートは各人のデータをオンラインで見て作成するのではなく、データのまとめ方を工夫して一覧を作りそこからプロブレムリストを作成することでコメントの作成を容易にした。
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