本研究では、アジア・太平洋地域の学校において、学校安全を包括的かつ客観的に比較・評価することが可能となるような新たな学校安全評価指標を開発することを目的として、日本、タイ王国、マレーシア及び中華人民共和国の小学校と中学校の教員を対象にアンケート質問調査を行った。 調査票は、6要因型安全統制感に対する意識、学校における安全推進を目的とした取り組みの現状に対する評価と今後の重点化に関する質問から構成されている。 回収された調査票は、日本では東京都・奈良県・広島県・高知県の小・中学校5校から、教員113名(男性38名・女性75名)、タイ王国ではバンコク市・チェンマイ市・ウドンタニ県・スラッタニ県の小・中学校24校から、教員801名(男性241名・女性560名)、マレーシアではプトラジャヤ連邦直轄地の小・中学校4校から、教員142名(男性8名・女性134名)、中国では北京市・上海市・昆明市・成都市の小・中学校7校から、教員411名(男性115名・女性296名)で、総計1467名から回答が得られた。また回答した教員の平均年齢は38.9才であった。 まず学校で教えるべき6要因型安全統制感では、「みんなで」が最も高く、次いで「自分から」となっており、「地域住民による」が最も低くなっていた。一方、子どもの安全推進を目的とした取り組みの現状については、「学校」での指導に対する評価が最も高く、「子ども自身」の学習活動の評価が最も低くなっていた。また、子どもの安全推進を目的とした今後の取り組みについては、「子ども自身」の学習と「学校」での指導の充実に対する必要性の意識が高くなっていた。以上の結果より、今後の学校における安全推進を評価していくためには、情報機器等のハード面よりも安全教育活動のソフト面、特に内的統制感に関わる評価を目的とした指標の開発が必要とされていることが明らかとなった。
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