研究課題/領域番号 |
24650423
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
武田 英二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00144973)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 食生活 / エピゲノム / 行動異常 |
研究概要 |
健康は遺伝因子と環境因子とくに食生活により規定されている。胎児期や幼若期だけでなく成長後の低栄養や過剰栄養によるエピゲノム修飾が、生活習慣病発症と関連するとされ、食生活と遺伝子エピゲノム修飾との関係解明は重要である。そこで平成24年度は、正常のSD(Sprague-Dawley)妊娠ラットに酸化ストレスを制御するパラチノースとオレイン酸の組み合わせ食(PO食)および酸化ストレスが強いシュクロースとリノール酸の組み合わせ食(SL食)を摂取させた。母親には引き続いて同様の食事を摂取させて母乳栄養させ、離乳後は異なる食事を摂取した母親からの子ラットを2群に分けてPO食あるいはSL食を摂取させた。これらを投与開始してから、それぞれ1週間および2週間後の行動解析を行った。その後、解剖を行い、脳病理組織、肪酸組成変化、炎症反応、糖・脂質代謝機能、ストレスホルモンを解析した。 結果:(1)ストレス行動解析をOpen fieldテストおよびLight/dark transitionテストで評価したところ、母親にSL食を投与し離乳後にSL食を摂取させたラット(SL-SL群)が強いストレス行動を示した。(2)SL-SL群の血液生化学的指標では、コルチゾール、グルコース、インスリン、中性脂肪(TG) 、炎症性サイトカイン(IL-6、IL-1)が増加し、脂質代謝は亢進していた。(3)ラットを断頭により脳を摘出し、遺伝子発現を評価したところ、stearoyl-Coenzyme A desaturase 1(SCD1)遺伝子発現が他の3群とり特異的に増加していた。 以上より、平成24年度の研究により胎児期および離乳後の行動異常に、炎症ストレスおよび脂質代謝異常との関係が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度研究の当初の計画では、ストレスの原因遺伝子のエピゲノム修飾をメチル化感受性制限酵素の利用(サザンブロットによるメチル化状態の検出、PCRによるメチル化状態の検出、バイサルファイトPCRを用いたRestriction Mapping)あるいはバイサルファイト反応の応用(バイサルファイト反応とシークエンス解析によるDNAメチル化解析、Real-time PCRを用いたDNAメチル化解析)を用いて解析および各群ラットの脳組織、肝臓、脂肪組織、膵臓の網羅的遺伝子解析を行う予定であった。しかし、候補遺伝子同定に時間を要したため、平成25年度に行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1)まず、平成24年度研究で明らかになったSL-SL群ラットの中枢神経SCD1遺伝子のエピゲノム修飾をメチル化感受性制限酵素の利用(サザンブロットによるメチル化状態の検出、PCRによるメチル化状態の検出、バイサルファイトPCRを用いたRestriction Mapping)あるいはバイサルファイト反応の応用(バイサルファイト反応とシークエンス解析によるDNAメチル化解析、Real-time PCRを用いたDNAメチル化解析)を用いて解析を行う。 2)SL-SL群ラットとPO-PO群ラットの脳組織、肝臓、脂肪組織、膵臓の網羅的遺伝子解析は約45,000個の遺伝子を含むDNAチップ(rat Genome430 2.0アレイ)を用いて解析し、エピゲノム修飾遺伝子の網羅的検出を行う。 3)成長後ラットへのPO食あるいはSL食投与とストレス耐性との関係を評価する。成長後ラットにPO食あるいはSL食を8週間摂取させたのちに、浸水ストレスをする。平成24年度と同様、ストレス行動解析ののちに解剖し、ストレス関連血液生化学的指標、糖・脂質代謝・炎症、脳および他組織遺伝子のエピゲノム解析および網羅的エピゲノム修飾を評価検出する。 以上より、エピゲノム修飾を介した食生活と健康とくにストレス反応との関係を解明するエピゲノム食生活科学創生の基盤を確立する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、動物購入、エピゲノム修飾解析試薬、DNAチップ解析試薬の物品費として1,000,000円および研究成果発表および情報収集のための旅費として400,000円を使用する予定である。
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