研究課題
妊婦の食事による胎児に対するストレスが出生児の栄養代謝障害を解明する目的で、たんぱく質・脂質・糖質の割合が出生児の代謝状態に及ぼす影響についてラットを用いて検討を行った。妊娠が確認されたSprague-Dawleyラットに通常の AIN93G(コントロール食,蛋白質:脂質:炭水化物エネルギー比=20:7:73)、50%カロリー制限食(CR食)あるいはコントロール食と等カロリーの高脂肪高スクロース食(HFS食,蛋白質:脂質:炭水化物エネルギー比=25:30:45)を妊娠期間中投与した。出生後は母親にはすべてコントロール食を与え、母乳で飼育した。3週齢で解剖し、体重、臓器重量、血液生化学データ、糖負荷試験、肝臓での遺伝子発現について検討した。肝臓での遺伝子発現について検討したところ、HFS食群で有意なステアロイル-CoAデサチュラーゼとΔ5デサチュラーゼの遺伝子発現が誘導されていた。これらの遺伝子発現は、脂質合成とりわけ慢性炎症やインスリン抵抗性などの原因となるn-6多価不飽和脂肪酸の合成促進に関わるものである。妊娠中のHFS食投与は、コントロール食と同等のカロリーであったとしても、カロリー制限と同様に耐糖能異常を引き起こすだけでなく、カロリー制限食以上に、肝臓でのn-6系脂肪酸の合成を促進するとともに、内臓脂肪蓄積を引き起こすなど、深刻な脂質代謝異常を惹起すると考えられた。このことは、妊娠時の栄養管理を行う上で、カロリー摂取量だけでなく、食事中の糖質や脂質の割合も出生後の子供の代謝に影響を及ぼすことを示唆するものである。
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