近年、リン過剰摂取が慢性腎臓病患者のみならず健常者においても心血管疾患の危険因子と考えられており、食生活における過剰なリン摂取を回避するための栄養管理法の開発が求められている。我々は、食品毎に生体内でのリン利用率が異なることに着目し、食品毎の生体へのリン負荷度を「リン負荷指数」とし、その理論の構築と栄養管理法への適用法について、本研究で確立することを目標としている。 本年度は、健常者20名を対象に200mgのリンを含む様々な食品を摂取してもらい、食後の血清リン濃度、副甲状腺ホルモン濃度、尿中リン排泄量を測定し、血清リン濃度曲線下面積あるいは副甲状腺ホルモン濃度曲線下面積を比較し、リン酸ナトリウムを基準としたときの相対的なリン負荷指数を求めた。その結果、動物性食品と植物性食品の比較では、動物性食品において相対的に血清リン濃度ー時間曲線下面積が大きく、高いリン負荷指数を示した。リンの吸収率が高いと考えられた。また、副甲状腺ホルモンの分泌量は、血清リン濃度曲線に影響し、食後の副甲状腺ホルモンの分泌量の少ない食品では、腎臓でのリン排泄が促進されず、血清リン濃度が高く保持され、結果的に血清リン濃度ー時間曲線下面積がより大きくなること、すなわちリン負荷指数が高くなることを見出した。 以上のことから、健常者であっても摂取する食品毎に血清リン濃度やPTH濃度の上昇度が異なること、またそれを数値化することが可能となった。今後、リン負荷指数を取り入れた食事を継続的に摂取することで、体内のリン代謝などに及ぼす影響を評価し、リン負荷指数の妥当性を検証する必要があると考えられる。
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