研究課題/領域番号 |
24650432
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
竹中 晃二 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80103133)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ストレスマネジメント / 東日本大震災 / 子ども / メンタルヘルス / メンタルヘルスプロモーション |
研究概要 |
被災者への心理的アプローチを考える際に,従来から行われてきたメンタルヘルス対策について整理しておく必要がある.従来,メンタルヘルスに関わる対応は,わが国に限らず先進諸国において,専門家による治療・心理療法(treatment),復職支援などの回復支援(rehabilitation),また質問紙調査などを用いてスクリーニングを行った上での初期介入(early intervention)が中心であった.たとえ「備える」という観点が存在していたとしても,地域,職域,学校において管理者となる立場の者が人々を監視しながら,人々に兆候が現れた段階で専門家にオファーするという形が一般的であった.以上のように,従来のメンタルヘルス対策では,予防(prevention)に関する具体的対応やそのプロモーション(promotion)が十分に行われていないことは明白である.東日本大震災の被災地では,被災後2年を経て,特別に配慮が必要な子どもの数は限られており,しかしすべての子どもは心的トラウマを共通して体験しており,今後長く続く復旧・復興の期間に新たなメンタルヘルス問題として表出するかもしれない.そのため,今後,メンタルヘルス問題として表出する可能性は誰もが抱えている.本研究では,その方法として,1つは学校で行えるストレスマネジメント教育を推奨し,もう1つはメンタルヘルス問題の予防行動キャンペーンを実施した.前者では,被災地の教師およびカウンセラーを対象に,「日常生活・災害ストレスマネジメント教育―教師とカウンセラーのためのガイドブック―(竹中・冨永, 2011)」を刊行し,それを基に学校におけるストレスマネジメント教育を推奨した.後者では,「こころのABC活動」と名付け,被災地において,子どもを対象としたメンタルヘルス問題の予防行動キャンペーンの実践を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を開始した際は,学校で行うべき事柄が山積みであり,また教員自身のストレスもきわめて高いために,学校や地域の協力を得ることが困難であった.また,地域の大人のメンタルヘルス問題も深刻であり,何かを行うように指示したり,推奨することには彼らの抵抗感が大きかった.その後,学校や地域から徐々に協力が得られるようになり,様々なツールやアプローチを用いて,大規模なメンタルヘルス・プロモーションを実施できるようになった.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,被災地の事情に合わせ,さらにきめ細かいソーシャルマーケティング介入を行うつもりである.子どもへの質問評価や不定愁訴に関わる調査について,介入前に実施したものの,被災地においては評価を行うことについて抵抗感があり,介入の中間時点で行うことができずにいる.今後は,評価として,質問調査とは別に,教師対象のフォーカスグループインタビューなどの質的調査を併用して,抵抗感の少ない評価を行うつもりである.
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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