本研究の目的は,東日本大震災被災地の子どもを対象に,彼らの精神的健康(メンタルヘルス)問題を予防する目的で,教育機関におけるストレスマネジメント教育を勧め,さらには積極的なメンタルヘルス・プロモーションを行うことであった。被災地においては,メンタルヘルス問題を抱えている人々に向けて対症療法が行われている一方で,長期に渡ってメンタルヘルスを良好な状態に保つことを目的とした予防措置が取られていない。特に,子どもは,物理的,社会的環境による影響をすでに受けており,彼ら自身がメンタルヘルス問題を予防したり,メンタルヘルスを良好に保つ活動を行う必要がある.本研究の初年度においては,被災地における学校,また教育関連機関においてストレスマネジメント教育を実施できるように,教師およびカウンセラーを対象に開発したガイドブックを用いた啓発活動を行った。次年度では,子どもの回復力を強化することを目的に積極的なメンタルヘルス・プロモーションを展開した。内容としては,クラスルーム内にポスターを貼付する,資料を用いて教師から子どもにメンタルヘルス・プロモーション活動を推奨する,シールやステッカーを配布する,保護者に対して目的を説明するリーフレットを配布する,プロモーションビデオを開発するなど,多要素からなる方略によってキャンペーンを実施した。本キャンペーンは,未だ継続中であるが,被災地の子どもの不安得点が低下するなど,彼らのストレス緩和に導いている。
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