研究課題
肥満は自然免疫系の活性亢進を特徴とする慢性の炎症障害であり,自然免疫系は肥満関連肝疾患の発生とその進展の病態に深く関与している.肥満関連肝疾患である非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の予防と治療には,食事・運動療法以外にコンセンサスが得られた方法はない.しかしながら,運動療法がNAFLDに対して有用であることの分子メカニズムは未だ解明されていない.一方,転写因子Nrf2は,抗酸化ストレス防御機構の発動や自然免疫の活性化を制御する司令塔である.本研究では,運動が転写因子Nrf2の賦活化により抗酸化ストレス応答を発揮し,炎症病態と酸化ストレスレベルの軽減により,NAFLDの予防と治療に有用であるとの仮説のもとに実験を進捗させた.本年度は,我々は転写因子Nrf2の活性化が体組成と肝脂肪の蓄積に影響を与えることを検討した.転写因子Nrf2の活性化が体組成と肝脂肪蓄積に及ぼす影響を解析した。WT,Nrf2KOに高脂肪食を9週間摂取させた.その後,8週間の運動実践を行う群と行わない群を設け,合計4群で比較した.小動物用腹部超音波装置、CTスキャンを用いて肝脂肪と体組成の変化を経時的に評価した。高脂肪食摂取により,Nrf2KOはWTに比して,皮下脂肪と内臓脂肪量は少量であったが,肝脂肪は増大し,肝脂肪の蓄積は顕著であった.WTにおける運動実践は肝と骨格筋のNrf2を活性化し,肝脂肪蓄積を顕著に改善した.しかし,Nrf2KOにおいては運動実践による肝脂肪化の改善は認められなかった.これらの結果より,肝と骨格筋のNrf2は高脂肪食による肝脂肪蓄積を抑止し,さらに,運動実践はNrf2を活性化によると考えられる肝脂肪酸代謝の修飾を介して,肝脂肪蓄積の改善に関与することが示唆された.
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