研究課題/領域番号 |
24650438
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70359579)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 心拍変動(HRV) / 糖尿病 / 心不全 / 交感神経 / 副交感神経 / 鍼刺激 / ラット |
研究概要 |
糖尿病モデルラットを作成し、HRV(心拍変動)の自律神経機能パラメーターを計測し非糖尿病ラットと比較した。雄性Wistar rat(5週齢)に,Streptozotocin(STZ,65 mg/kg 1 回)を投与し,糖尿病を作成した。血糖値が400 mg/dl 以上のラットを糖尿病ラットとした。Control(n=6、血糖値:74±25 mg/dl)、糖尿病4週目(DM4W; n=6、血糖値:456±45 mg/dl)、糖尿病20週目(DM20W; n=6、血糖値:519±70 mg/dl)の3群に分けた。 HRVの計測は、解析機器PowerLabを用いた。 心電計測は、針電極を使用し,II 誘導の位置(右肩:-極,左肋骨下縁:+極,右側腹部:不関電極)に対して、連続500心拍を記録した。HRV の解析にはChart Ver.5.5.6を用い、心電図RR間隔の周波数解析(高速フーリエ変換)を行い、X 軸をfrequency(Hz),Y 軸をPower(ms2)とした周波数解析図を作成した。低周波数成分(LF)、高周波数成分(HF)の周波数帯はそれぞれ、0.04Hz<LF<0.67 Hz、1.0 Hz<HF<1.5 Hz と定義した。交感神経指標はLF/(LF+HF)、副交感神経指標はHF/(LF+HF)と定義した。 【結果】交感神経指標のLF/(LF+HF) は、Control (0.054), DM4W (0.092), DM20W (1.49)と糖尿病が進行するにしたがって増加した。一方、副交感神経指標のHF/(LF+HF) はControl (0.946), DM4W (0.908), DM20W (0.851) と減少する傾向を示した。糖尿病ラットモデルの自律神経機能をHRVで評価すると、交感神経緊張は亢進し、副交感神経緊張は相対的に低下することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H24年度は、まず糖尿病ラットの作成とそれに対する心拍変動(HRV)による評価が行った。糖尿病ラットは、Streptozotocinの腹腔内投与により安定して作成することができた。高血糖であることはStreptozotocin投与3~5日後には確認できたが、糖尿病として安定させるため、4週間モデルと20週間モデル2群を作成した。心拍変動(HRV)の周波数解析を用いた検討では、交感神経指標(LF/(LF+HF))は、糖尿病群では対照群に比べて20週に至るまで順次増加した。一方、副交感神経指標(HF/(LF+HF))は、糖尿病の病期が延びるに応じて、低下した。臨床研究においても、糖尿病では、副交感神経成分が減少し、周波数解析のpowerは低周波数側にshiftしており(Vinik AL, et al. Diabetes Care 2003;26:1553)、本モデルは臨床における糖尿病の自律神経変動をよく反映しているものと考えられた。このモデルに対して、副交感神経を賦活する鍼刺激を行い、自律神経のバランスの不均衡を是正し、糖尿病合併症(腎症)発症の遅延もしくは改善を検討するはずであったが、鍼刺激装置の選定と購入が遅れたため、次年度に繰り越しとなり、計画の進捗がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
H24年度は、糖尿病の病的ラットモデルの適正な作成とHRVによる自律神経障害モデルとしての妥当性の評価にとどまった。H25年度は、副交感神経刺激を行い、次の評価を行う。 1)ラットの下腿に鍼刺激(通電)を行い、心拍数の低下を指標とした副交感神経の有効刺激部位を同定する。2)鍼刺激により心拍数のみならず、HRV周波数解析による副交感神経成分(HF/(LF+HF))の増加がみられるかどうか、確認する。3)副交感神経成分(HF/(LF+HF))の増加が確認された場合、鍼刺激の回数、パターンと副交感神経成分の増加の維持期間を確認し、副交感神経刺激の影響が長期に及ぶ刺激法を確立する。4)上記をふまえた上で、①対照群、②糖尿病群(Streptozotocin投与20週)に対し、副交感神経刺激を行い、①副交感神経刺激の疾患特異性の検討、②糖尿病性自律神経障害の軽減効果を調べる。5)一方、当初計画にある心筋梗塞モデルにおける心筋remodelingに対する効果も、上記で得られる最適副交感神経刺激法を用いて行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、主に実験県消耗品の購入にあてられる。 1)鍼刺激に必要な鍼、およびその補助器具。2)ラット購入費用と食餌、飼育費。3)薬品(麻酔、糖尿病作成)および実験消耗品 4)手術器具、人工呼吸器関連サプライ。 前年度からの繰り越し金8,035円は、期日までに納入できない物品が出現したため生じた。次年度の実験費用の内訳として、ラットの購入・飼育維持に40万円、糖尿病の作成・維持に10万円、副交感神経受容体抗体など薬品に20万円、実験器具・実験消耗品に20万円(+前年度繰越金8,035円)、学会出張費に10万円、合計1,008,035円となる。
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