研究課題/領域番号 |
24650438
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研究機関 | 筑波技術大学 |
研究代表者 |
松下 昌之助 筑波技術大学, 保健科学部, 教授 (70359579)
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キーワード | 心不全 / 糖尿病 / 自律神経 / 副交感神経 / 鍼 / 心拍変動 / 高周波数成分(HF) / ラット |
研究概要 |
H25年度は、若年糖尿病ラットと老年長期糖尿病ラットにおける交感神経の周波数分布について検討を行った。自律神経系のバランスの評価は、H24年度と同様にHRV(心拍変動)の自律神経機能パラメーターを用いた。また、心エコー法を用いて心機能(EF)も計測した。 雄性Wistar rat 5週齢(n=6)と40週齢(n=6)にStreptozotocin(STZ,65 mg/kg 1 回、皮下注)を投与し、糖尿病を作成した。また、対照群としてそれぞれ5週齢(n=6)と40週齢(n=6)に生食を注射した。若年糖尿病ラットではSTZ投与4週間後に計測し、老年糖尿病ラットではSTZ投与20週間後に計測した。血糖値、体重はそれぞれ、若年対照群(57±20mg/dl、310±24g)、若年糖尿病群(456±45mg/dl、303±11g)、老年対照群(74±25mg/dl、757±12g)、老年対照群(519±70mg、367±18g)であった。HRVの交感神経機能指標であるLF/(LF+HF)と心機能の指標であるEFはそれぞれ、若年対照群(0.0062±0.0057、69±8%)、若年糖尿病群(0.0115±0.0122、73±5%)、老年対照群(0.0086±0.0097、79±9%)、老年対照群(0.0644±0.0339、58±7%)であった。交感神経指標は若年ラットの4週間の高血糖では、上昇する傾向を示したものの統計的に有意ではなかった。一方老齢ラットの20週間の高血糖では、交感神経指標は有意に増加した(p<0.01)。この群の比較では、血糖の上昇に加えて、体重の減少、EFの減少が有意であった(それぞれp<0.01、p<0.01)。これらの結果は、糖尿病における自律神経系の変化には、栄養障害、心機能障害が連動していることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H25年度は、糖尿病のHRV変化の意味について検討を行い、糖尿病における心臓自律神経の変化は、単に自律神経活動の変化を示すのみならず、糖代謝異常に基づく栄養障害、また、心機能障害を同時に伴っていることを示すことが判明した。交感神経の持続的亢進が病態を悪化させることは、糖尿病に限らず心不全においても知見が蓄積されつつあり、交感神経機能に対する介入の意義もβ遮断剤を中心に検討が行われている。一方、副交感神経を刺激することにより、自律神経系のリバランスを得ようとする試みも一部では行われ始めている。H25年度は、鍼刺激による有効な副交感神経反応を得ることが出来なかったが、H26年度は鍼刺激による副交感神経に対する有効作用部位を得て、研究の進展を図りたい。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度は糖尿病および心筋梗塞ラットを作成し、HRV周波数解析を行い、それぞれ交感神経優位なHRVの特性が記録されたが、鍼をラットに刺入し自律神経変化(副交感神経刺激)を得る最適点を得ることができなかった。そこでH26年度は副交感神経刺激最適点を確認し、初期の研究目的を達成したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は、副交感神経神経刺激最適点を確認できなかったため、当初予定していた副交感神経刺激による糖尿病や心筋梗塞の改善を示す実験がが行えず、それらの経費が次年度使用額となった。 主にラット実験にかかわる費用としてラット購入・飼育費、実験消耗品(動物用鍼等)および評価のための薬品類(抗体、試薬等)の購入費に充てる。
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