研究実績の概要 |
高血圧ラット(SHR)に対して鍼電気刺激を行い、心臓自律神経の変化を心拍変動法で検討した。ラットはSHRと対照(各n=5)を用いた。【方法】刺激場所は両側の「足三里」(膝蓋骨下脛骨外側5mm)で、鍼を刺入後15分間通電した(5 Hz)。刺激前、刺激中、刺激15分後の3点で心電図心拍変動法の自律神経指標を比較した。心電図のRR間隔を時間領域解析指標(Total Power, RMSDD)、周波数領域解析指標(HF, LF/HF)を用いて検討した。心拍の間隔の揺らぎ(Total Power)が小さいほど交感神経の緊張が高い。また、RMSDDが大きいほど副交感神経活動が大きい。HFは副交感神経活動、LF/HFは交感神経活動を示す。【結果】SHR群では、対照群に比べ電気刺激前では有意にtotal powerが低く(6±5 vs. 92±128 ms2)、心拍変動が低調であり、自律神経活動の大幅な低下がうかがわれた。また、RMSDDからみた副交感神経活動は抑制されていた(4.4±4.0 vs 7.2±4.8)。周波数解析領域の交感神経と副交感神経指標の変化を、電気刺激前、電気刺激終了直前、電気刺激終了15分後で比較すると、交感神経指標のLF/HFはSHR群では(0.77→0.83→1.10)、対照群では(0.17→0.12→0.52)であった。また副交感神経活動指標のHFはSHR群では(28→42→46 nu)、対照群では(30→30→39 nu)であった。【考察】鍼治療において足三里の刺激は自律神経調整機能があるとされている。今回、大きな自律神経機能の低下がみられたSHRモデルにおいて、自律神経調整特異点(例えば足三里)の鍼の電気刺激は自律神経活性化作用を示した。とくに、副交感神経の回復度が対照群より大きかったことに注目し、今後さらなる特異点の開発とその応用を目指したい。
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