研究概要 |
昨年度に続き簡易体力指標創出を目指してエルゴメータによるRamp負荷に対する循環及び呼気ガス応答の同時計測実験を行い、被験者数を昨年度の12名から38名まで増加した。昨年度と同様に嫌気的代謝閾値(AT)を求め、この時の負荷値(Lat)と心拍数:HR、一回拍出量:SV、心拍出量:COの応答の変曲点における負荷値(Lhr, Lsv, Lco)との相関を検討した。その結果、Latとの相関についてLhrが最も良かった者が18名、Lsvが16名、Lcoが18名とほぼ同数となった。またこれら全データとLatとの相関は回帰直線の傾き:a=0.915、相関係数:r=0.922と良好な直線相関となった。以上より無侵襲的に得られるLhr, Lsv, Lcoのうち、どれか一つを何らかの基準により選定できれば高精度でLatを推定可能であることがわかった。なお選定基準としては過去の運動履歴やその種類(瞬発力か持久力かなど)などを考慮する必要があると予想される。 一方、血中乳酸濃度(BLC)の負荷応答から得られる乳酸性閾値(LT)は古くからATと同様に体力評価指標として用いられているが、血液サンプリングを要し連続測定できないなどの問題がある.そこで今年度の新たな研究課題として無侵襲的に得られる循環諸量から上記ATの代替としてLTを推定可能か実験的に検討した。健常成人男性27名を対象にエルゴメータ多段階負荷に対する循環及びBLC応答を計測し、LT時における負荷値(Llt)とLhr, Lsv, Lcoとの相関を検討した。その結果LcoにおいてLltと最も良い相関(a=0.819、r=0.903)が得られたことより、LTと循環機能との関係性については心臓の「変時作用」を反映するHRと、「変力作用」を反映するSVの両側面を含んでいるCO(=HR×SV)を用いた方がより高精度でLTを推定可能であると考えられた。
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