加齢に伴う骨格筋量減少を示すサルコペニアは、要介護に至る主要因の一つであり、その予防法の確立は極めて重要な課題の一つである。本研究の主目的は、サルコペニアを予防するシステムを構築することであった。そのために次の(1)と(2)の課題について挑戦した。(1)筋量(サルコペニア)に関連するバイオマーカーの作成。(2)サルコペニア(進行)予防を目的としたテーラーメード型介入法の確立。 (1)に関しては、生体電気インピーダンス法によって計測した骨格筋量(SMI)と関連するバイオマーカーを検証した。幾つかの有力なバイオマーカーとの関連性を検討したところ、男女ともに骨格筋の同化作用を有するインスリン様成長因子(IGF-1)がSMIと相関関係にあった。今後は長期的にフォローを行いながら、これらのマーカーが骨格筋量減少の予測に役立つのかを検証する。 (2)に関しては、サルコペニアの予防・改善に向けて、一般高齢者および虚弱高齢者を対象に数種類の介入を実施した。その結果、虚弱高齢者では運動介入だけでは骨格筋量の増加に不十分であり運動に栄養補助を加えるコンビネーションの介入の必要性が示唆された。一方、一般高齢者であれば運動介入単独でもある程度の効果が認められた。一般高齢者に対しては運動介入に加えて食事指導を行う介入を実施したが、その効果は運動単独と同様であった。一般高齢者に対する栄養補助の必要性に関しては十分に検討が出来ておらず今後の課題である。
|