研究課題
1. 中高齢期における転倒予防において,特にレジスタンストレーニングによる下肢筋群の筋力改善は必須要件であるが,これに加えて身体各部位を巧みに操作してつまずきや転倒を未然に予防する対策として,近年,調整力の改善に向けた取り組みに焦点を当てた運動指導の重要性が注目されている.しかし,調整力の定義は,確立されるには至っていないのが現状である.2. 前述のことから,中高齢者の転倒予防を想定した調整力の定義も全く為されていない.しかし,中高齢期における調整力を評価する定義,指標あるいはツールなどが存在しない以上,調整力改善の運動指導を評価する術が無いことから,調整力の改善が為されたか否かについての判定をすることができず,転倒予防に繋がった対策であるか否かを判別する事は困難である.3. 本研究では,同一地域に在住する一般中高齢者及び二次予防対象高齢者449名(年齢:73.7±8.73歳,BMI:24.6±3.76,%Fat:33.1±6.84%)を対象として,約3ヵ月間の定期的な運動指導前後に形態,身体組成,体力測定,質問紙による転倒経験,運動習慣,ADL,抑うつ度,主観的健康度・幸福度に関する調査を実施した.4. 運動指導開始前におけるデータ(186名)に対して,開眼片足立ち,反復横跳び及び障害物歩行を従属変数として,それぞれZスコアを算出し,その合計値を求めた.そして,ステップワイズ法による重回帰分析を行い,以下の結果を得た.5. 調整力=6.817+0.208×日常生活活動-0.090×年齢-0.584×定期的な運動の有無-0.104×BMI-0.803×性別(r2=0.648) 今後の課題として,中高齢者を対象にしたため体調等の理由から測定上の欠損値が多く,分析に活用する項目に制約が生じたこと及び測定値の個人差が大きかったこと等から,更なるデータ収集の必要性が示唆された.
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