加齢、老化に伴う体内時計の機能低下は糖尿病、がん、循環器障害など様々な成人性疾患の原因になることが指摘されている。しかしながら、時計機能を強化することで、これら疾患を予防または治療しようとする試みはない。これは体内時計の機能低下のメカニズムが不明であったこと。また、時計機能を回復させる有効な手段がなかったためである。本研究では申請者らが発見した体内時計の機能維持遺伝子(ATF4)を標的とし、老化によって低下した体内時計の機能を活性化させることで糖尿病、がん、循環器障害などの成人性疾患に対する新しい予防・治療法を開発することを目的とする。 前年度までの検討において、アミノ酸等の化合物にATF4の発現量をコントロールできる働きがあることを示唆する所見を得ていた。このことからアミノ酸類似化合物を中心にATF4の発現量を正常範囲に維持する物質の探索を行ったが、有効な分子の同定には至らなかった。一方で、このスクリーニングを行っている過程で、ATF4はがん細胞内において細胞死を制御するタンパク質の発現を制御し、抗がん剤に対する感受性に概日性の変動を引き起こすことを見出した。本研究成果は、がん細胞内における体内時計の活性化が、抗がん剤感受性のコントロールに繋がることを示唆する所見である。
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