研究課題/領域番号 |
24650452
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
李 成吉吉 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 自立支援開発部, 特任研究員 (80583666)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 身体機能 / 認知機能 / 全身反応時間 |
研究概要 |
老年期の認知症は発症後の治療が非常に困難とされる。そのため認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であり、認知機能低下の予測因子の解明が急がれている。本研究では、身体機能が将来の認知機能の低下を予測しうるかどうかを明らかにすることを目的とする。対象者は、2400人を対象としたNILS-LSAのデータを用いた。まず、第6次調査のデータを用いて身体機能(長座位前屈、閉眼片足立ち、全身反応時間、脚伸展パワー、膝伸展筋力、握力、10m歩行)と認知機能(MMSE得点)との関連について性、年齢を調整した相関解析を行ったが、ほとんどの項目において相関関係が認められた(r= 0.22~0.39、<0.0001)。また、 第2次調査から第6次調査時MMSE得点の3点以上の低下の有無を目的変数とし、対象者を第2次調査時の体力(長座位前屈、閉眼片足立ち、全身反応時間、脚伸展パワー、 膝伸展筋力、 握力、10m速歩行)で3分位に分け、それぞれの影響について多重ロジスティック回帰分析を性別に行った。その結果、全身反応時間・脚伸展パワーは男女ともに認知機能との関連が認められた。しかし、残りの体力項目と認知機能との関連は認められなかった。また、認知症の二次予防の観点から、認知機能が低下し始めた中高齢者をいち早く発見することが重要であるが、全身反応時間・膝伸展パワーは認知機能低下の予測因子であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度研究計画は、縦断データベースの構築や横断解析により身体機能と認知機能との関連について明らかにすることであった。同年度の7月には第7次調査のデータベースの構築ができた。また、横断解析による身体機能と認知機能(MMSE)との関連について検討した結果、ほとんどの身体機能は認知機能と有意な相関関係があることを確認できた。これらの結果から当初計画していた今年度の研究計画は十分満たしていると考えられた。さらに、今年度構築したデータベースを加えた過去10年間の膨大なデータを使った身体機能と認知機能に関する縦断解析も行った。この結果を昨年9月に岐阜で開催された第67回日本体力医学会にて発表を行った。この研究内容は、次年度の研究計画で有り、当初の研究計画以上に進めてきているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究では、身体機能(特に、全身反応時間・脚伸展パワー)は認知機能低下の予測因子であることが確認できた。一方、先行研究によると、身体機能は認知機能低下の予測因子ではなく、認知機能の低下が身体機能の低下をもたらすという報告もあり、次年度はその経時関係について新たな検討を加える。これらの結果を踏まえて最終年度(平成26年度)には、全身反応時間の測定数値から、何年後に認知機能がどの程度低下するのか、そのリスクを推定するための式の作成を試みる。今年度得られた結果は海外の雑誌に投稿を予定している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、15年にわたって実施されてきた長期縦断疫学調査の蓄積データを活用し、研究を実施する。そのため縦断解析に関する高度な統計解析の情報収集が必要であり、次年度は統計解析に関する講習会の参加を積極的に行う予定であるため講習会などの参加費が予想される。また、認知症に対する研究および疫学的なエビデンスの発信は国内外から注目されており、超高齢社会である日本の研究成果は学会などにより海外の研究者とその成果に対する意見交換や議論を深めていく予定である(第20回国際老年学会ソウル大会、韓国)。さらに、その成果を積極的に日本の雑誌ほか英文雑誌にも投稿するが、雑誌によっては投稿料や印刷費等の支出が見込まれる。
|