昨年は、無作為抽出された地域在住中高年者を対象とした縦断的検討により、身体機能と認知機能との関連について検討を行った。身体機能は性差が認められるため、性差による身体機能はMMSEの多様なcut-off pointにどのような影響を与えているかについて詳細な検討を行った。その結果、男性では、閉眼片足立ち、全身反応時間、脚伸展パワー、脚伸展筋力がMMSE23点以下への低下と関連が認められた。しかし、MMSE26点と27点以下への低下とは関連が認められなかった。女性においては全身反応時間と握力がMMSE23点と26点への低下と関連が認められた。特に、通常歩行および最大歩行の歩幅やスピードがMMSE23点および26点への低下と関連が認められたことは本研究の大きな特徴であった。一方、うつは認知症の危険因子とされておりより早くうつ発症の予測が重要である。今年は、同対象者における身体機能とうつとの関連を検討し、どの身体機能がうつ(CESD>=15)と関連しているか検討を行った。その結果、認知機能と同様に全身反応時間が遅いほどうつになりやすいことがわかった(odds 1.46)。また、前年度と同様に男性では脚伸展筋力が、女性では握力が関連していた。
|