研究課題/領域番号 |
24650457
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
坂上 真理 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (70295369)
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研究分担者 |
道信 良子 札幌医科大学, 医療人育成センタ-, 准教授 (70336410)
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キーワード | 認知症高齢者 / 作業科学 / 質的研究 |
研究概要 |
平成25年度は,これまでの調査で得た知見を検証することと,『生活再構築アプローチ』(以下,アプローチ)の開発に向けて,認知症対応型共同介護(以下,グループホーム)での継続調査,調査施設職員への基礎資料の提供とアプローチに向けた試行,国内外の学会並びに研究会での中間報告,文献調査を実施した. 1)グループホームでの継続調査とアプローチに向けた試行 研究代表者と研究分担者は前年度に調査を行ったグループホームで引き続き調査を実施した.調査は,フィールドワークによる情報の蓄積に伴い,これまでの「記述的観察」から調査対象をより絞った「焦点化観察」に手法を変更して実施した.その結果,調査施設職員にはアプローチの開発に向けた基礎資料の提供に至り,その資料をもとに研究代表者,研究分担者,調査施設職員で入居者の理解と援助について討議した.基礎資料の提供後は,アプローチに向けた試行として日常介護の場面における調査施設職員の関わり方の変化と入居者の作業の変化を調査対象に加えて追跡調査した. 2)国内外の学会並びに研究会での中間報告と文献調査 研究代表者は,欧米の作業科学研究者が参加する学術大会で研究成果を報告するとともに,作業療法士の国際学会に演題抄録を提出し受理された.さらに,海外の認知症高齢者の施設でナラティブの研究を実施している研究者が出席する2つの研究会で研究成果を報告し,成果を討議するとともに,アプローチの方法論に関わる重要な意見交換を行った.また,研究代表者と研究分担者は国内の作業科学の学術大会に参加し,「作業」概念の省察を深めるために参加者らと情報交換を行った.他方,文献調査については,これまで行った認知症高齢者の理解,作業科学的研究の動向に関する先行研究レビューに加え,海外研究者との研究討議によって得た示唆に基づきアプローチの方法論を再考するための先行研究のレビューを実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)グループホームでの継続調査とアプローチに向けた試行 アプローチの開発に向けて,前年度の調査施設でより焦点化した調査を行った.すなわち,研究代表者は言語能力と重症度レベルを含めた症候学的特徴の違い,研究分担者は文化に基づく行動様式に主要な視座をおき,より詳細な情報の収集と分析を行った.さらに,調査施設職員に対する基礎資料の提供とその資料に基づいた具体的な討議を行った.その結果は調査施設職員の日常介護に反映され,それを含めた調査を行うことで当該年度の目標であったアプローチの開発に向けた重要な示唆を得た.なお,当初の研究計画では,施設環境の違いを比較するために介護老人保健施設での調査を予定していたが,調査施設にて居住環境と入居者個人の状況に著明な変化があったため,その変容過程を追うことがアプローチの開発にはより有効と考え,グループホームのみで調査した. 2)国内外の学会並びに研究会での中間報告 研究代表者は,「第47回日本作業療法学会(2013年6月)」並びに欧米の作業科学研究者が参加する「Society for the Study of Occupation:USA(2013年10月)」の研究大会で研究成果を報告し,研究成果に関する討議を行った.また,研究成果の中間報告のため「世界作業療法連盟世界大会(2014年6月,横浜)」に演題抄録を提出し受理された.この他,静岡県(2013年12月)と東京都(2013年10月:オンライン参加)で開催された研究会で成果を報告し,認知症高齢者を対象としたナラティブ研究を行ったいる海外研究者との研究討議を行い,人・環境・行為をつなぐアプローチの方法を全体論から検討するための重要な情報を得た. 3)文献調査 認知症高齢者の理解と作業科学的研究の動向に関する先行研究レビューを行い,報告にむけて結果をまとめている.
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今後の研究の推進方策 |
1)研究成果のまとめとワークショップの開催 本研究の協力者のほかに,認知症高齢者のケアやリハビリテーションに携わる保健医療福祉従事者,研究者を対象としたシンポジウムを開催する.シンポジウムでは,スウェーデンのグループホーム等で「認知症高齢者と“Home”」をテーマとした研究を行っている海外研究者を講演のために招へいし,さらに研究代表者と研究分担者による本研究の成果発表と討議を行う. 2)研究成果のまとめと成果報告 研究代表者と研究分担者は,これまでの研究成果をまとめて論文を作成し,作業科学,作業療法,医療人類学関連の学術雑誌に投稿する.この他,日本作業療法学会と医療人類学関連の学術大会にて研究成果を報告する. 3)『生活再構築アプローチ』の方法論の再検討 追跡調査の詳細な分析とアプローチの方法論を再考するために実施した文献調査の結果,さらに認知症高齢者を対象としたナラティブ研究を行ったいる海外研究者との研究討議によって得た知見をもとに,『生活再構築アプローチ』の開発に向けた示唆を得る.
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究への協力を得た調査施設職員等を対象に,スウェーデンのグループホーム等で『認知症高齢者と“Home”』をテーマとした研究を行っている海外研究者をその来日に併せて招へいし,本研究の成果発表とともにシンポジウムを開催することを予定した. しかし,当該研究者の来日のタイミングから,最終年度内にはシンポジウムへの招へいがかなわず,未使用額が発生した. 本研究の協力者のほかに,認知症高齢者のケアやリハビリテーションに携わる保健医療福祉従事者,研究者を対象としたシンポジウムを開催する. 内容は,本研究の成果発表とスウェーデンの研究者の講演である.開催時期は,招へいする研究者の来日に併せ,平成26年秋を予定する.なお,未使用額は,招へい研究者の講師謝金,旅費(東京から札幌会場往復)に使用する.
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