研究概要 |
低栄養状態に暴露された小腸の機能低下メカニズムおよびその回復メカニズムを明らかにするために、長期間絶食下に暴露され、また、消化管の再生能力が高いことで知られる無尾両生類であるXenopus laevisを用い、実験を行なった。成体のXenopus laevisを3週間絶食を行ない、再摂食させた1日後に解剖し、小腸および肝臓を採取した。その結果、小腸においては、エネルギー産生に関与する遺伝子【β酸化関連遺伝子(ACOX1)】 、脂質の吸収に関与する遺伝子(CRBPII, L-FABP, I-FABP)、糖質の消化吸収に関与する遺伝子MGAM、転写因子(FXR、CREB1、Cdx-2)が、絶食によって低下もしくは、低下傾向にあった。さらに、再摂食後1日においてACOX1, ACOX2、CRBPII,L-FABP, I-FABP,CREB1、Cdx-2の遺伝子発現が顕著に増大した。これらの結果は、無尾両生類では、3週間の絶食下においても、1回の再摂食によって遺伝子発現が顕著に回復することを示唆している。 さらに、本研究では、ラットにおいても絶食-再摂食の実験を行なった。3日間の絶食によって糖質の消化吸収に関与する遺伝子(SGLT1)および、タンパク質の分解・アミノ酸の吸収に関与する遺伝子(DPP4, APN, PEPT1, SLC3A1, ALC7A9, ALC16A10, SLC3A2, SLCA7)の遺伝子の多くの発現が1/5から1/10以下にまで減少するとともに、再摂食1日後においても、そのほとんどが低い状態であった。さらにSGLT1遺伝子上のヒストンのアセチル化を観察してみると、再摂食によって増大しなかった。さらに、タンパク質の分解・アミノ酸の吸収に関与する遺伝子の絶食による発現低下は、mRNAの分解によって調節されていることが明らかとなった。
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